Q 深海魚の研究はできますか?
A 深海の定義にもよりますが、水深200 mよりも深いところの魚を採取することはできます。そのうえで、何を調べるのか。魚類分類学(今村先生、河合先生、田城先生)の研究、魚類生態(山村先生)の研究ができるかもしれません。詳しくは、各先生に聞いてください。
A(山村先生より) 山村研では特に「深海魚研究」の看板は掲げていませんが、現在フジクジラ(深海性の小型サメ)とイラコアナゴ(深海性のアナゴ類)の生態を研究対象にしている大学院生が居り、他にもまだ研究対象が居るかもしれません。主に共同研究のパートナーである外部機関の調査航海に参加させて戴いて試資料を集めることになります。
A(河合先生より) 海洋生物科学科では3年次の秋に乗船実習を実施しています。その実習では深海底曳トロール(例年、水深800から1,000m付近を曳網)と日没後の中層曳トロールを行っています。底曳トロールではホラアナゴ類、ソコダラ類、チゴダラ類、ゲンゲ類、ウラナイカジカ類や、時々チョウチンアンコウ類やアカチョッキクジラウオも採集されます。中層曳トロールではソコイワシ類、ヨコエソ、ハダカイワシ類などが非常に良い状態で採集されます。採集されたすべての魚類の種名を調べ、重さを計測し、一部の種では胃内容物を調べたりもします。
私たちの研究室では魚類を対象として、種分類や系統分類を行っています。4年生になるとそれぞれの研究室に配属になります。深海性魚類を対象として研究している学生や院生もいます。詳細はホームページをご覧ください。http://www.humzfish.com/index.html
函館キャンパスには北海道大学総合博物館分館の水産科学館があります。その標本庫には23万点の魚類標本が保管されていて、その中には多くの深海性魚類も含まれています。学生ボランティアも募集しています。その活動の中でも深海性魚類に触れることができます。https://twitter.com/FSC_HOUM
Q 船酔いが心配なのですが。
A 基礎乗船実習に参加してみましょう。函館湾や津軽海峡の近場での航海実習です。荒天時は、無理せず、穏やかな湾内に入るでしょう(あまり揺れない)。この航海で大丈夫だったら、洋上実習や乗船実習に参加すればよいです。また、乗船しなくても、他の実習系の授業単位をとれば卒業できます。
コラム「船酔いと研究」へリンク
Q 海洋生物科学科で、なんで、海洋化学があるのですか?
A 海洋基礎生産が海洋生態を支えていますよね。海洋基礎生産は、海洋の水の流れや、栄養成分の供給で決まります。うちの学科では、海洋環境から、海洋生態まで、広くあつかっています。
Q 高校で、物理と化学しか学んでいないのですが、大丈夫ですか?
A 海洋生物科学科では、生物系の授業は必修なので、生物学の基礎を独自に学ぶ必要があると思います。しかし、物理や化学を学んでいたことは、海洋環境を理解するうえで強みになるので、海洋生物科学科も選択肢に考えるといいでしょう。
Q 大学院進学するものですか?就職しても、研究したことは役立たないのでは?
A 研究に興味があるなら、大学院進学をお勧めします。北海道大学は大学院大学であり、研究者育成に見合った研究環境が整っています。たとえ研究職以外の職種に就くことになったとしても、大学院での経験は無駄にはなりません。研究の過程で、皆さんは、論文などからの情報の取得、研究計画の策定、調査や実験によるデータの取得・整理、データの解析、研究室での様々な議論、学会発表(国際学会で英語で発表する人も珍しくありません)などを経験します。これらの経験は、たとえ研究した分野とは関係のない職種に就いたとしても、きっと皆さんにとって有益でしょう。本学部の場合、就職率も学部生よりも修士のほうが高いですし、専門的な職種に就職する比率もぐっと上がります。
Q どのような就職先がありますか?
A 水産学部全体でお答えします。民間企業(職種はさまざま)も官公庁(公務員)や研究機関などに就職していますが、内訳は学部卒と修士卒、博士卒で異なります。令和元年度の進路状況では、学部卒は民間企業39人、官公庁4人、研究機関1人で、進学が141人でした。修士卒は民間84人、官公庁11人、研究機関7人で進学が10人でした。博士卒は民間3人、ポスドク研究員3人、大学教員4人でした。
なお、高校生のときの「高校別の大学進学実績」などと違って、就職先は偏差値では決まりませんし、「同じ成績だから同じ就職先」ということには決してなりません。「就職実績」は、先輩たちの実績であり、それが自分にそのまま適用できるわけではないのです。まずは自分がどのような職種に興味があるのかを考えましょう。
Q 淡水魚の研究に興味があるのですが、海洋生物科学科か、増殖生命科学科か悩んでいます。どのような違いがあるのでしょうか。
A (和田先生より)ふたつの学科の境界はあいまいですが、海洋生物科学科は「生態学」寄りで、増殖生命科学科は「生理学」寄りです。例えば私の研究室では大学院生がイワナやアマゴの形態や行動、生活史の進化について生態学の観点から研究していて、学部4年生がキンギョの学習について研究をしていますが、どちらも、生きた魚をそのまま調査、実験する手法で研究していて、遺伝子や神経生理などは調べていません。
Q バイオロギングに興味があるのですが、海洋資源科学科か、海洋生物科学科のどちらから入るのがいいのかわかりません。
A 水産学部でバイオロギングの研究をしている教員は、海洋生物海洋生物科学科:綿貫(海鳥),海洋資源科学科 高木(魚類),宮下(魚類など),米山(魚類),富安(魚類など) となります。バイオロギングの対象生物から考えると、海鳥が海洋生物科学科、、魚類は海洋資源科学科になります。
Q 南極に興味があるのですけど、、、
A 是非! ただし、南極観測隊に参加できるのは、博士課程進学してからか、博士課程進学が決まった修士2年以降でしょう。それまでは、サロマ湖での氷上観測などがあります。また、練習船による海洋観測で野外調査に慣れておくのがよいでしょう。いずれにしても、「南極に行きたい」と強く願って、それに向けて学んだり、行動を起こせば、かなうものです。(by 野村先生 代筆大木)
Q クラゲに興味があるのですけど、海洋生物科学科でできますか?
A(山村先生より) クラゲ類そのものを専門の研究対象としている教員は学科には居ませんが、映像データによる種同定や現存量推定はプランクトン研究室で実施可能かもしれませんし、臼尻実験所では修士課程の院生が沿岸域に出現するクラゲ類を対象に現在研究を行っています。「待ち」の姿勢では実施困難と思われますが、本人の熱意とアイデアがあり、事前に教員とよく相談すれば対応可能な研究室はありそうです。
A(和田先生より)私の研究室では、昨年度と今年度の2年続けてミズクラゲの「ポリプ」を研究対象とした修士研究がおこなわれています。クラゲといえば、みなさん、海中を浮遊している状態を思い浮かべますが、あれは「メデューサ」と呼ばれる有性生殖世代であり、ごく簡単にいえばメデューサから生まれた無性生殖世代にあたるのが「ポリプ」です。イソギンチャクに似た形をしています。修士生たちはメデューサの野外調査もしていて、数種のクラゲでメデューサの実験も試みたのですが、実験操作がなかなか難しく、飼育実験が容易なポリプで興味深いことがたくさん見つかったので、二人ともポリプで修士研究をおこなうことになったという次第です。