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光分解するジヨードメタンが、光が降り注ぐ海洋表層に高濃度で存在するナゾ
噴火湾では、毎年、5月以降に、表層海水でジヨードメタン(CH2I2)の濃度が急増する現象が捉えられています。
その理由が全く、ナゾなのです。
北極海の海底付近でも、何故か、ジヨードメタンの濃度が高かったので、「海底にジヨードメタンの発生源があるかも?」と思って、海底堆積物の採取とヨウ素ガスの測定をしてみました。
その結果、堆積物では、ヨードエタン(C2H5I)ばかりが高濃度で、当初期待した、ジヨードメタンが高濃度になる様子は全く捉えられませんでした。
噴火湾の海水分析の鉛直分布からわかるように、ジヨードメタンは表層付近で生産されているようです。
「表層付近で生産されている」と述べてしまいましたが、それも全くナゾです。
ジヨードメタンは、太陽光に含まれる青色波長の光で、容易に分解するのですが、
光が届く海洋表層に、ジヨードメタンが常に存在しているのが、最大のナゾです。
当初、光が弱い亜表層に蓄積しているジヨードメタンが鉛直混合で表層に供給されて、表層での濃度が保たれている、と信じ込んでしました。
それで、鉛直混合を詳しく調べる「乱流計測」、光透過深度を調べる「光観測」、ジヨードメタン計測、を3つ同時に調べて、確かめることにしました。
(海洋混合学の創設(代表:安田一郎先生)の公募課題として取り組ませてもらい、安田先生グループ、平譯先生グループなどに協力してもらいました)
その結果、鉛直混合では、海洋表層のジヨードメタン濃度は維持できない、という結果になってしまったのです。そこから、いろいろ仮説を立てて、アレコレ検証しているところです。現在は、以下のように、植物プランクトン体内(もしくは表面の酸性多糖類)にヨウ素が保たれている仮説を立てて、その検証をしようとしているところです。
生きている植物プランクトンからジヨードメタンが発生していると考えて、噴火湾の夏場に優占する、渦鞭毛藻の培養を始めました。
(水産学部の松野先生からアドバイスをいただき、4年生の河西君が大量培養を試みているところです。ガンバレ!河西君!)
(河西君、植物プランクトン培養では、ちゃんと光を当てて、夜は休ませ(細胞分裂させ)、温度を管理して、栄養塩とビタミン、炭素律速にならないよう炭酸水素ナトリウムをちゃんと入れるのだよ。君には、プランクトンに対する愛が足りないんだよ。注:ガス計測に使うので、完全密封するので炭素律速になるのです)