Topic outline
本MoodleコースとSDGsの関連
「国連海洋科学の10年」では、海洋科学の知見や技術を総動員してSDGs達成に貢献しようとしています。「国連海洋科学の10年」で定められている海洋科学のカテゴリーの一つに、「Marine ecosystem functions and processes」があります。このカテゴリーには、海洋生態系の構造や多様性、さらには、化学や物理プロセス、栄養塩循環、エネルギーフローまでを含んでいます。これらが海の豊かさを支えているからです。このようなことを、物質の流れを追うことで理解するのが、物質循環研究です。本Moodleコースで紹介している研究では、海の物質循環を理解することを目的としています。その研究内容や成果を発信することで、多くの人にSDGs目標14を知ってもらいたいと思います。
なぜ噴火湾で海洋観測?
噴火湾は、北海道南西部に位置する、内湾です。
下の左図の黒色塗りの部分は、数十万年前、海だったところです。その昔、噴火湾は、太平洋と日本海を結ぶ海峡だったと考えられます。
噴火湾の周りには、活発な火山があるので、「噴火湾」と名付けれらているようです。
海流図(下の左図)を見てください。寒流の親潮、暖流の黒潮(→津軽暖流)が近くを流れていますね。
春先に、親潮の水が噴火湾に流れ込み、晩夏に、津軽暖流の水が噴火湾に流れ込みます。
噴火湾の水は、初春と晩夏に水が入れ替わるので、春から夏、秋から冬、水が滞留するのです。
その期間であれば、外洋の水(親潮系水や黒潮系水)の水質変化を時系列で追うことができるのです。
(海流があるところでは、1か月ごとに同じ場所で観測をやっても、同じ水を観測することは、ほぼ不可能です)
噴火湾で海洋観測を毎月のように行えば、いろいろなことが発見できるだろう、ということで観測を続けています。
実際に、植物由来のイソプレン濃度が変る要因を明らかにしたり、有機ヨウ素ガスの発生についての知見が得られています。
毎年、3月初旬から、3週間くらい、珪藻のブルームが起きます。年間の基礎生産量の半分くらいが、この春の珪藻ブルームによって支えられています。
以下は、人工衛星で調べた海表面のクロロフィル濃度の分布です。
噴火湾で何を測るの?
海洋化学の基礎パラメタは、なるべく多く測っています。
とりあえず、測れる成分は、なるべく全部測っています。解析しきれていませんが、、、海水成分:溶存酸素、全炭酸、アルカリ度、栄養塩(5成分)、有機ガス成分(ハロカーボン類、イソプレン、そのうちメタンも)
粒子成分:珪藻ブルーム時の珪藻懸濁物(ノルパックネットで鉛直採取) → 炭素、窒素、リン、ケイ素、(そのうち、ヨウ素も)
堆積物成分:栄養塩、有機ガス成分、炭素、窒素、リン、ケイ素
(論文は、研究テーマのメインに据えている、有機ガス成分の解析ばかりになっています。そのうち、炭素、窒素、ケイ素も)噴火湾観測の写真集(一部、LASBOS YouTubeへのリンクつき)
珪藻ブルーム時に、珪藻有機物を大量に集めて、分解培養実験に使っています。
いつも、漁場学講座の人たちの協力を頂いています。ありがとう。堆積物サンプルです。
堆積物の化学環境と底生生物の様子を調べようとしました。大変なので中断しています。
生物のことは、生物屋に任せた方がいい、、、と弱気になっています。アシュラ採泥器です。1回に3本の堆積物サンプルを得ることができます。
冬の観測は景色がよい。羊蹄山です。
うしお丸船内で、堆積物から間隙水を吸い取っている試料処理です。
宮下君(左)は、小僧のように、鼻水を垂らしながら観測をしていました。
かつての、噴火湾観測のツートップ。二人とも、環境コンサルの会社に就職しました。
うしお丸での食事風景。毎航海カレーを出してほしい!
うしお丸のCTDロゼット採水装置。これくらいのミニサイズが使いやすい。
十年近く前の観測の様子。名誉教授の久万先生(右)は、退官直前まで観測の最前線に立っていました。
ところ狭しと採水します。
観測の合間の小休憩