Seleccionar actividad 水圏生化学実験(タンパク質)(11)陰イオン交換クロマトグラフィー(解説)
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用語集
DEAE(ディーイーエーイー):ジエチルアミノエチル KCl(ケーシーエル):塩化カリウム M(モーラー):mol/L Q-Sepharose(キューセファロース):アガロースビーズを担体とした強イオン交換担体 Quaternary ammonium(クォーテナリーアンモニウム):第四級アンモニウム アガロース:ゲル化しやすい中性多糖 陰イオン交換体官能基(いんいおんこうかんたいかんのうき):プラスの電荷をもち、陰イオンを結合する官能基 塩基性アミノ酸(えんきせいあみのさん):塩基性の側鎖をもつアミノ酸 塩化物イオン(えんかぶついおん):塩素の陰イオン 解糖系(かいとうけい):糖の代謝経路 化学修飾(かがくしゅうしょく):官能基を化学的に変化させること 吸光度(きゅうこうど):溶液に吸収される光の量 筋形質画分(きんけいしつかくぶん):筋繊維の細胞質の一部の成分を取り分けたもの 緩衝液(かんしょうえき):濃度が変化してもpH が大きく変化しない溶液 クロマトグラフィー:物質を分離、精製する手法の1種 懸濁(けんだく):固体粒子が液体中に分散した状態 酵素(こうそ):タンパク質性の触媒 サイトゾル:細胞質から細胞小器官を除いた部分 酸性アミノ酸:酸性の側鎖をもつアミノ酸 担体(たんたい):他の物質を固定する土台となる物質 芳香族(ほうこうぞく):芳香族化合物、環状不飽和有機化合物の一群 ミオグロビン:タンパク質の1種 リニアグラジエント:直線的濃度勾配
字幕
1 00:00:05,605 --> 00:00:14,347 タンパク質の混合物から 構成成分を分離するという クロマトグラフィーの手法です 2 00:00:14,347 --> 00:00:16,616 何を分離するかというと 3 00:00:16,616 --> 00:00:22,122 この実験の初日にできた 筋形質画分 4 00:00:22,122 --> 00:00:30,797 コイの挽肉に低塩濃度緩衝液を添加して ガーゼで濾過した濾液です 5 00:00:30,797 --> 00:00:36,269 濾液は凍らせて 冷凍庫に保管されていますが 6 00:00:36,269 --> 00:00:42,375 そこには解糖系の酵素とか ミオグロビンとか 7 00:00:42,375 --> 00:00:49,683 アクトミオシン以外のサイトゾルに含まれる タンパク質が溶けています 8 00:00:49,683 --> 00:00:56,89 それを分離・分析するのが 今日と明日2日間の実験です 9 00:00:56,89 --> 00:01:02,662 空のカラムに 担体を充填するのが 今日の作業です 10 00:01:02,662 --> 00:01:04,764 実物(の担体)は これですが 11 00:01:04,764 --> 00:01:09,703 今は 1M の塩化カリウム溶液に 懸濁してあります 12 00:01:09,703 --> 00:01:14,908 下の方に沈んでいますが (担体は)球状のビーズ(Q-Sepharose)です 13 00:01:15,41 --> 00:01:22,48 直径が だいたい90μm 14 00:01:22,515 --> 00:01:26,19 アガロースのビーズです 15 00:01:26,19 --> 00:01:33,159 アガロースは多孔質なので 中に溶媒やタンパク質がしみこんでいきます 16 00:01:33,560 --> 00:01:38,598 このアガロースに 化学修飾がされていきます 17 00:01:38,598 --> 00:01:44,70 何が結合するかというと この「Q」が結合します 18 00:01:44,70 --> 00:01:48,708 この「Q」が何かというと 19 00:01:48,708 --> 00:01:59,619 (陰イオン交換体官能基の1種 Quaternary ammoniumです) 20 00:01:59,619 --> 00:02:09,629 こういうものが 表面にたくさん結合しています 21 00:02:10,697 --> 00:02:16,636 こういう官能基なのですが 常に正に荷電しています 22 00:02:16,636 --> 00:02:22,575 例えば 今でしたら 1M の塩化カリウム溶液に 懸濁していますが 23 00:02:22,575 --> 00:02:32,585 塩化カリウムの中の塩化物イオン(Cl⁻)と 結合した状態になっています 24 00:02:32,585 --> 00:02:39,526 こういうものが 表面にいっぱいくっついた 25 00:02:39,526 --> 00:02:44,30 つまり 正に荷電した官能基が 26 00:02:45,365 --> 00:02:54,474 たくさん表面に付いた ビーズになるのですが 27 00:02:54,474 --> 00:03:04,17 ここに 負に荷電したタンパク質を流して + と- を引き合わせて結合させる 28 00:03:04,551 --> 00:03:09,289 結合の強さが タンパク質の種類によって違うことを利用して 29 00:03:09,289 --> 00:03:16,396 タンパク質の混合物から 個々のタンパク質を分離する というのが 30 00:03:16,396 --> 00:03:19,799 イオン交換クロマトグラフィーです 31 00:03:20,200 --> 00:03:29,576 + に荷電している担体ですから ここに結合するのは - に荷電したものとなります 32 00:03:29,576 --> 00:03:38,551 タンパク質の中でも - によく荷電したタンパク質は強く結合しますし 33 00:03:38,551 --> 00:03:50,597 そうではなく + に荷電したタンパク質は結合しない という特性を示します 34 00:03:51,364 --> 00:03:57,904 時間短縮のために 今回は 空のカラムの中に 35 00:03:57,904 --> 00:04:04,611 半分くらい 担体を詰めています 36 00:04:04,611 --> 00:04:12,686 その上から タンパク質の混合物を流し込みます 37 00:04:13,520 --> 00:04:18,725 そして このチューブの先から 38 00:04:21,628 --> 00:04:33,173 分離して出てくるものを 5ml ずつ 別々の試験管で取ります 39 00:04:34,307 --> 00:04:43,49 担体に強く結合する - の荷電の強いタンパク質は なかなか出てきません 40 00:04:43,49 --> 00:04:50,223 しかし + の荷電を持ったタンパク質は 反発しあうので 決して結合しません 41 00:04:50,223 --> 00:05:01,234 それから - の荷電を持っていても タンパク質の種類で 荷電の強さが違います 42 00:05:01,768 --> 00:05:07,974 少ししか - の荷電がないタンパク質は (出てくるのが)比較的早いです 43 00:05:07,974 --> 00:05:11,378 たくさん- の荷電を持っているタンパク質は なかなか出てこないです 44 00:05:11,378 --> 00:05:17,617 タンパク質の荷電状態は 種類によって違います 45 00:05:17,617 --> 00:05:22,589 それを左右するのは タンパク質のアミノ酸配列の中に 46 00:05:22,589 --> 00:05:27,327 どういうアミノ酸が どのくらい含まれているかということになります 47 00:05:27,327 --> 00:05:34,134 (プリントの)上に 酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸がありますが 48 00:05:34,134 --> 00:05:42,709 酸性アミノ酸 これは下の方を向いているCOOH(カルボキシ基) 49 00:05:42,709 --> 00:05:47,47 ここが中性付近では COO⁻ に解離しますので 50 00:05:47,47 --> 00:05:48,682 この酸性アミノ酸 51 00:05:48,682 --> 00:05:53,586 アスパラギン酸とグルタミン酸が 相対的に多く含まれているタンパク質は 52 00:05:53,586 --> 00:06:00,326 より強く負に荷電する そんなタンパク質を 酸性タンパク質と言います 53 00:06:00,326 --> 00:06:03,863 この 陰イオン交換クロマトグラフィーをすると 54 00:06:03,863 --> 00:06:07,567 (正に荷電した)担体とより強く結合するので なかなか出てきません 55 00:06:07,567 --> 00:06:11,304 一方 タンパク質は 酸性アミノ酸だけではなく 56 00:06:11,304 --> 00:06:15,642 塩基性アミノ酸も たくさん存在しています 57 00:06:15,642 --> 00:06:19,212 ヒスチジンは あまり強い塩基性アミノ酸ではないですが 58 00:06:19,212 --> 00:06:30,223 リジンやアルギニンの先端にあるNH₂や アルギニンのグアニジノ基は 59 00:06:30,223 --> 00:06:35,462 これは 中性付近では 強く正に荷電しています 60 00:06:35,462 --> 00:06:39,766 相対的に 酸性アミノ酸と 塩基性アミノ酸はどちらが多いか 61 00:06:39,766 --> 00:06:46,606 まったく同じ数だと 荷電が0 になってしまうのですが 62 00:06:46,606 --> 00:06:51,311 塩基性アミノ酸のほうが 酸性アミノ酸より多い場合 63 00:06:51,311 --> 00:06:57,917 担体の荷電と タンパク質の荷電が反発しあうので 64 00:06:57,917 --> 00:07:02,322 上から流した時に 担体と全く結合しないで真っ先に流れてきます 65 00:07:02,322 --> 00:07:03,690 明日についてですが 66 00:07:03,990 --> 00:07:06,626 グラフを描いてもらいます 67 00:07:06,626 --> 00:07:10,597 グラフの確認が終わってから 帰っていただきます 68 00:07:10,597 --> 00:07:14,534 横軸は溶出体積 69 00:07:14,901 --> 00:07:19,406 溶出体積とは 下から何ml 出てきたか 70 00:07:22,442 --> 00:07:27,213 縦軸は吸光度なのですが 71 00:07:28,548 --> 00:07:33,286 多くのタンパク質は 芳香族のアミノ酸を持っていますので 72 00:07:33,286 --> 00:07:36,923 紫外線を吸収します 73 00:07:36,923 --> 00:07:43,263 280nm の紫外線の吸光度を測ります 74 00:07:43,263 --> 00:07:47,267 下から出てきた溶液を 5ml ずつ試験管に受け取って 75 00:07:47,267 --> 00:07:55,408 10本くらいとって 吸光度を測り グラフにプロットします 76 00:07:55,408 --> 00:08:01,481 だいたい 山が2つくらいできると思います 77 00:08:02,215 --> 00:08:10,690 最初の山は 塩基性タンパク質 78 00:08:10,690 --> 00:08:14,594 早く出てきます 79 00:08:14,594 --> 00:08:20,66 遅れて出てくるのは (担体と)強く結合している 酸性タンパク質です 80 00:08:20,66 --> 00:08:26,740 単にタンパク質の混合液を流すだけでも 分離しますが 81 00:08:26,740 --> 00:08:30,877 効率よく分離するためには 82 00:08:30,877 --> 00:08:35,48 例えば 強く担体に結合したタンパク質は 83 00:08:35,48 --> 00:08:39,652 溶媒をたくさん流しても がっちり結合しているので 出てきません 84 00:08:39,652 --> 00:08:45,392 結合しているのを 離すためにどうするかというと 85 00:08:45,392 --> 00:08:52,98 (担体に) - の荷電を持ったタンパク質が 結合しているのですが 86 00:08:52,98 --> 00:09:02,42 タンパク質よりも もっと強く - に荷電していて 強く担体と結合する溶媒を 87 00:09:02,42 --> 00:09:06,546 上から流していく それは何かというと 88 00:09:06,546 --> 00:09:10,917 今回の場合は塩化物イオンです 89 00:09:10,917 --> 00:09:16,256 塩化物イオンを 1M KCl溶液に懸濁してありますが 90 00:09:16,256 --> 00:09:23,363 1M までではありませんが 最大で300mM の塩化カリウムを流していて 91 00:09:23,363 --> 00:09:25,799 塩化物イオンが流れてくると 92 00:09:25,799 --> 00:09:35,809 濃度にもよりますが + の部分に塩化物イオンが結合していきます 93 00:09:36,843 --> 00:09:46,853 始めはタンパク質が結合していたのですが これが塩化物イオンに置き換わります 94 00:09:46,853 --> 00:09:55,95 そして タンパク質が離れて 下から出てきます 95 00:09:55,95 --> 00:10:02,302 強く結合しているタンパク質は 塩化物イオンの濃度を高くしないと出てきません 96 00:10:02,302 --> 00:10:12,312 弱く結合しているタンパク質は 比較的低い塩化物イオンの濃度でも出てきます 97 00:10:12,679 --> 00:10:19,285 上から流す溶媒の中に含まれる 塩化物イオンの濃度ですが 98 00:10:19,285 --> 00:10:25,592 始めは低くして 徐々に高くしていくというように 99 00:10:25,592 --> 00:10:29,662 溶媒を流して溶出させます 100 00:10:29,662 --> 00:10:33,433 これが 塩化物イオンの濃度の変化です 101 00:10:33,433 --> 00:10:45,345 最初は0mM 最後は300mM になるように 102 00:10:46,179 --> 00:10:49,115 (右上がりのグラフを) 「リニアグラジエント」と言います 103 00:10:49,115 --> 00:10:53,286 上から流す緩衝液に含まれる 塩化物イオンの濃度を 104 00:10:53,286 --> 00:10:57,724 0から300mM に 直線的に上げていくことによって 105 00:10:57,724 --> 00:11:01,628 弱く結合している タンパク質を先に出し 106 00:11:01,628 --> 00:11:04,964 強く結合している タンパク質を後から出す 107 00:11:04,964 --> 00:11:07,133 そのようにして 分離を行います 108 00:11:07,133 --> 00:11:12,539 今日使う担体は 「Q-Sepharose」ですけれども 109 00:11:12,539 --> 00:11:17,77 陰イオン交換担体は ほかにもいろいろな種類があります 110 00:11:19,479 --> 00:11:29,489 原研究室の学生実験では DEAEを使いましたが それは 111 00:11:31,691 --> 00:11:38,465 ジエチルアミノエチル というもので これは 112 00:11:39,199 --> 00:11:48,441 ここに水素イオンが結合すると + に荷電した状態になります 113 00:11:48,441 --> 00:11:52,645 結合していなければ 荷電はなくなります 114 00:11:54,47 --> 00:11:56,850 溶媒のpHによりますが 115 00:11:56,850 --> 00:12:02,756 中性付近ではここに水素イオンが結合すると + に荷電する 116 00:12:02,756 --> 00:12:07,761 今回使う 「Q-Sepharose」は 117 00:12:07,761 --> 00:12:12,832 水素イオンが結合していなくても 最初から+ に荷電しています 118 00:12:12,832 --> 00:12:18,338 なので DEAEよりも より強く正に荷電しているので 119 00:12:18,338 --> 00:12:25,812 今回の担体のほうが 陰イオン性のタンパク質を結合する力が強いです 120 00:12:25,812 --> 00:12:32,385 ですので 溶出させるのにも DEAEよりも強い条件で 121 00:12:32,385 --> 00:12:38,625 塩化物イオンの濃度を より高めにしなければなりません 122 00:12:38,625 --> 00:12:42,796 つまり 含まれているタンパク質の種類によって このような担体 123 00:12:42,796 --> 00:12:48,768 陰イオン交換担体でも いろいろな種類を使い分けるようにします