用語集
ADP(エーディーピー):アデノシン二リン酸
ATP(エーティーピー):アデノシン三リン酸
ATPase(エーティーピーアーゼ):ATPを分解する酵素
アクチン:アクチンフィラメントを形作るタンパク質
アクチンフィラメント:タンパク質の複合体
アクトミオシン:アクチンとミオシンの結合体
カルシウムイオン:カルシウム原子がプラスの電荷を帯びたもの
カルシウムポンプ:カルシウムイオンをATP由来のエネルギーを利用して運搬するタンパク質
カルモジュリン:カルシウム結合タンパク質の1種
筋小胞体(きんしょうほうたい):筋原線維の周囲に発達している小胞
筋繊維(きんせんい):筋細胞のこと、筋肉を構成する線維状の細胞
軽鎖(けいさ):タンパク質が大小2つの基本単位で構成されている場合の分子量の小さい方
細胞質(さいぼうしつ):原形質のうち核質以外の部分
トロポニン:トロポニンT、I、Cの複合体
トロポニンC:トロポニンを構成するサブユニット、カルシウムイオンと結合する
トロポニンI:トロポニンを構成するサブユニット
トロポニンT:トロポニンを構成するサブユニット
トロポミオシン:アクチン結合タンパク質
ミオシン:タンパク質の1種
ミオシンフィラメント:ミオシンが繊維状に結合したもの
リン酸:リンのオキソ酸の1種
字幕
1
00:00:05,605 --> 00:00:16,483
ATPの分解は 生体内では
アクチンフィラメントをたぐり寄せながら行われますが
2
00:00:16,483 --> 00:00:20,53
超沈殿が起こるとき
ATPを分解しながら
3
00:00:20,53 --> 00:00:23,590
どんなことが起こるのかを
説明します
4
00:00:23,590
--> 00:00:33,433
この反応はATPとアクチンで起こる
サイクル反応ですが
5
00:00:33,433 --> 00:00:35,935
生体内の筋肉の中で
6
00:00:35,935 --> 00:00:41,508
ATPは 細胞の中に
常に一定の濃度で存在しています
7
00:00:41,508 --> 00:00:45,478
ATPが消費されたら
解糖系などの様々なところ
8
00:00:45,478
--> 00:00:49,382
リン酸を保存している所から
ATPが再生されて
9
00:00:49,382 --> 00:00:51,751
常に一定の濃度になるように
存在しています
10
00:00:51,751 --> 00:00:56,56
アクチンもミオシンも
筋肉の中にあるとなると
11
00:00:56,56 --> 00:01:01,94
この反応が常時動いたまま
つまり
このサイクルが回ったままになり
12
00:01:01,94 --> 00:01:05,932
筋肉は常に収縮した状態に
なってしまいます
13
00:01:05,932 --> 00:01:09,936
それでは困るので
どうなっているかというと
14
00:01:09,936 --> 00:01:14,140
筋細胞に刺激が伝達された時だけ
この反応が起こって
15
00:01:14,140
--> 00:01:19,913
伝達されないときは この反応が起こらないように
制御されています
16
00:01:19,913 --> 00:01:24,117
それに関わるのが
カルシウムイオンです
17
00:01:24,117 --> 00:01:27,754
皆さんのアクトミオシンにも
含まれていますが
18
00:01:27,754 --> 00:01:30,557
アクチンフィラメントの構造を見ると
19
00:01:30,557
--> 00:01:35,295
トロポミオシンや
トロポニンというタンパク質があります
20
00:01:35,295 --> 00:01:40,767
これが カルシウムイオンによる調節に関わっている
タンパク質です
21
00:01:40,767 --> 00:01:47,707
神経から筋細胞 即ち筋繊維に
刺激が到達すると
22
00:01:47,707 -->
00:01:54,914
その刺激が 細胞の膜系を通って
筋小胞体にまで伝達されます
23
00:01:54,914 --> 00:02:02,255
筋小胞体には
細胞質中のカルシウムイオンを くみ上げて貯蔵する
24
00:02:02,255 --> 00:02:05,959
カルシウムポンプというものがあり
それが常時働いています
25
00:02:05,959 -->
00:02:10,630
筋小胞体の中は
カルシウムイオン濃度が高くなっていますが
26
00:02:10,630 --> 00:02:15,435
小胞体の外側は カルシウムイオンがほとんどない
という状態に保たれています
27
00:02:15,435 --> 00:02:22,475
筋細胞に刺激が伝達されると
その筋小胞体にあるカルシウムイオンチャネルが開く
28
00:02:22,475
--> 00:02:29,849
すると 小胞体から
アクチンフィラメントやミオシンフィラメントがあるところに
29
00:02:29,849 --> 00:02:31,885
カルシウムイオンが放出されます
30
00:02:31,885 --> 00:02:33,653
そのカルシウムイオンが
31
00:02:33,653 --> 00:02:35,255
トロポニンCに結合します
32
00:02:35,255
--> 00:02:38,491
トロポニンCのCは
カルシウムのCです
33
00:02:38,491 --> 00:02:40,960
ここにカルシウムイオンが結合すると
34
00:02:40,960 --> 00:02:45,298
トロポニンCは
とても大きな立体構造の変化をします
35
00:02:45,298 --> 00:02:54,74
その情報が 隣にくっついているトロポニンIやトロポニンT
さらにトロポミオシンに伝達されます
36
00:02:54,74
--> 00:02:59,646
アクチンの上に トロポミオシンが
横たわるように結合しています
37
00:02:59,646 --> 00:03:02,148
(トロポミオシン)が
少し位置を変えます
38
00:03:02,148 --> 00:03:07,520
すると アクチン分子上のミオシンと接合します
39
00:03:07,520 --> 00:03:12,759
ミオシンはアクチンの
特定の場所に結合します
40
00:03:12,759
--> 00:03:15,462
(アクチンの)特定の場所が
表面に出てくる
41
00:03:15,462 --> 00:03:19,332
それによって
③ ④の反応が可能になります
42
00:03:19,332 --> 00:03:22,736
②で(ミオシンは)
アクチンから離れますが またくっつく
43
00:03:22,736 --> 00:03:27,974
くっつくことによって
ADPとリン酸が分離(③)されて
サイクルが回ります
44
00:03:27,974 --> 00:03:32,479
アクチンとミオシンが
くっつくことができなければ
45
00:03:32,479 --> 00:03:36,649
①~④のサイクルが回らず
筋肉は収縮しません
46
00:03:36,649 --> 00:03:40,487
刺激が無いときは
トロポミオシンが
47
00:03:40,487
--> 00:03:43,523
アクチン上のミオシンの頭部が
結合する部位を
48
00:03:43,523 --> 00:03:47,427
邪魔して
結合が起こらないようにしています
49
00:03:47,427 --> 00:03:50,864
カルシウムが
トロポニンCと結合すると
50
00:03:50,864 --> 00:03:55,969
トロポミオシンが
移動して収縮が起こります
51
00:03:55,969
--> 00:04:02,442
刺激が止み
収縮の必要がなくなると
52
00:04:02,442 --> 00:04:07,914
常時働いている
筋小胞体の膜にあるカルシウムポンプが
53
00:04:07,914 --> 00:04:14,320
周りを漂っていたカルシウムイオンを
どんどん小胞体の中に汲み上げていきます
54
00:04:14,320 --> 00:04:17,90
そのためカルシウムイオンの濃度が
どんどん下がっていきます
55
00:04:17,90
--> 00:04:22,562
濃度が下がっていくと
トロポニンCに結合していたカルシウムイオンも解離して
56
00:04:22,595 --> 00:04:27,500
また立体構造が変化して
刺激が無いときの状態に戻ります
57
00:04:28,1 --> 00:04:31,604
アクチンとミオシンの結合を
トロポミオシンが邪魔して
58
00:04:31,604
--> 00:04:36,242
筋肉の収縮が
止むことになります
59
00:04:36,242 --> 00:04:41,214
アクチンフィラメントとミオシンは
60
00:04:41,214 --> 00:04:44,484
こういう構造を
皆さんの溶媒の中でも保っています
61
00:04:44,484 --> 00:04:48,722
アクトミオシンに
トロポニンやトロポミオシンがついています
62
00:04:48,722
--> 00:04:52,258
ですので 溶媒の中に
63
00:04:52,258 --> 00:04:56,96
カルシウムイオンを
入れたり入れなかったりすると
64
00:04:56,96 --> 00:04:59,632
ATPを入れたときに
起こる②~④の反応も
65
00:04:59,632 --> 00:05:02,635
起こったり
起こらなかったりするはずです
66
00:05:02,635
--> 00:05:07,674
ATPが分解されて
ADPとリン酸が放出されるためには
67
00:05:07,674 --> 00:05:10,777
アクチンとミオシンを
結合しなければならないので
68
00:05:10,777 --> 00:05:17,83
カルシウムが無いときは結合できないので
リン酸(Pi)の遊離がない
69
00:05:17,83 -->
00:05:24,324
カルシウムがあるときは結合できるので
リン酸が遊離してサイクルがまわることを学ぶので
70
00:05:24,391 --> 00:05:29,829
ATPase活性を 皆さんは
カルシウムのある条件 ない条件
71
00:05:29,829 --> 00:05:35,68
2通りで測って 結果を比較してもらうというのが
(ATPase活性測定)の実験です
72
00:05:35,68
--> 00:05:39,873
この カルシウムによる筋肉の収縮調節というのは
73
00:05:39,873 --> 00:05:44,978
筋肉の種類や動物の種類で
だいぶ違います
74
00:05:44,978 --> 00:05:52,118
同じ脊椎動物でも 横紋筋は
トロポニンによって収縮調整されていますが
75
00:05:52,118 --> 00:05:54,354
平滑筋は全く違います
76
00:05:54,354
--> 00:05:58,825
カルシウムが結合するのは
トロポニンCではなく カルモジュリン
77
00:05:58,825 --> 00:06:01,928
別のカルシウム結合タンパク質になります
78
00:06:01,928 --> 00:06:07,801
また 同じ横紋筋でも無脊椎動物
軟体動物などは
79
00:06:07,801 --> 00:06:19,412
カルシウムは
トロポニンCにも結合しますが
ミオシンのアルカリ軽鎖にも結合します
80
00:06:19,412 --> 00:06:24,351
それによって アクチンとの結合が
促されて収縮が起こります
81
00:06:24,351 --> 00:06:28,555
このように
動物の種類によっても異なっています