一般
2021年秋に突如として道東太平洋岸の広範囲な海域に発生した大規模有害赤潮は、サケやウニなどの北海道の重要水産資源に甚大な被害を及ぼし、総額100億円に迫るという、日本でも最大規模の赤潮被害をもたらした。その原因プランクトン藻は、渦鞭毛藻類のカレニア・セリフォルミスという、これまで国内での赤潮発生は報告されていない種であった。
カレニア・セリフォルミス (Karenia selliformis) の発生要因として、2021年夏に同海域にて観察された「海洋熱波」と呼称される高水温や、秋の台風襲来の少なさなど、複数の事柄が挙げられている。しかし今回、外洋域の広範囲にわたり発生した大規模有害赤潮は、水深の浅い瀬戸内海や有明海など、これまで日本の沿岸・内湾域にて発生していた赤潮とは、その発生要因が異なることが考えられる。また水産物への被害として、サケ、ウニ、ツブあるいはタコなどは斃死など、大きな被害を受けた一方、同じ海域に生息していたカニやホタテなどへの被害は少ないなど、その毒性影響は分類群により異なることが示唆されている。しかし現在のところ、カレニア・セリフォルミスの有する毒成分については未解明なままである。
道東赤潮の発生を受けて、現在大きく二つの研究・検討が進められている。一つは今回の赤潮の発生要因の解明と予察方法の開発、二つ目は水産生物に対する有害性の解明である。本コースでは北海道大学水産学部での研究結果および、道総研や水研機構など関連研究機関で進められている研究についてまとめるとともに、赤潮や植物プランクトンに関する一般的な知識についても紹介していく。