Topic outline
植物プランクトン試料の採水
海表面の場合はプラスチックバケツによって、水面下の場合はニスキン採水器やバンドン採水器などにより1 Lを採水します。
採水試料には、終濃度が1%になるようにグルタールアルデヒドを添加して固定します。
固定試料は遮光して冷暗所に保存します。冷蔵庫内に保存するのが良いです。
試料の濃縮
固定試料は重量を測定した後に、ストーンテーブルなど(図1,2)、揺れの無い場所にて24 時間以上静置し、植物プランクトンを沈殿させます(図3)。
図1.ストーンテーブル 図2.ストーンテーブル 図3.ストーンテーブル上での静置沈殿 その後、上澄みの植物プランクトンを含まない海水を、サイフォンを使って取り除きます(図4)。
図4.サイフォン プランクトン研究室では1 L容器で濃縮した後に、 110 mLの瓶に入れて、再度沈殿後、サイフォンを使って上澄みを除いて、最終的には20 mL瓶に入れるまで濃縮します(図5)。
濃縮試料の重量も測定します。
最初の野外で使用した瓶と、最終的に使用する瓶の重量をそれぞれ引いた値を用いて、何倍に濃縮したか、試料の濃縮係数を求めます。図5.濃縮に用いる瓶
試料の検鏡準備
濃縮試料は同じく冷蔵庫内で遮光保存しておき、検鏡時には試料を緩やかに攪拌後、ピペットで定量(2 mLほど)を底面に網目の書いてある、植物プランクトン計数用スライドグラスに採ります(図6)。
図6.計数用スライドグラス この植物プランクトン計数用スライドグラスには、2 mLの試料を入れられるような枠が設けられており、そこに濃縮試料をピペットで入れます。
この大きな枠に合うようなカバーグラスも市販されており、最初にそのカバーグラスをセットしておき、途中まで試料を入れた後に、
スライドグラス枠とカバーグラスの間に試料が入り、カバーグラスが浮くようになると、毛細管現象でカバーグラスはスライドグラス枠上にはまるように回転します(図7,8)図7.計数用スライドグラスにカバーグラスを載せる 図8.カバーグラスを載せる
倒立顕微鏡での観察
スライドグラス内で植物プランクトンが沈殿するまで(約10分程度)静沈させた後に、倒立顕微鏡で約200-400倍で観察します(図9, 10)。
図9.倒立顕微鏡 図10.倒立顕微鏡の対物レンズ 計数時には網目を何個数えた際に何細胞がいるかという値を取得し、全体の底面積あたりの観察マス数を用いて、全体で採取した濃縮試料中に何細胞が含まれていたかを計算します(図11)。
図11.計数法 植物プランクトンに関しては、Hasle and Syvertsen (1997) およびHorner (2002) に基づき種レベルまで同定します。渦鞭毛藻類Karenia selliformisの種同定には細胞内の葉緑体の数が有用です (Iwataki et al. 2021)。繊毛虫類に関しては、有鐘類と少毛類に分けて計数します。また、ナノプランクトンおよび珪質鞭毛藻類に関しても計数します。計数は、 1試料につき300細胞以上を目安に行います。計数後、試料中の各分類群の細胞密度 (cells mL-1) を計算します。
参考文献
Hasle, G.R. and Syvertsen, E.E., 1997. Marine diatoms. In: Tomas, C.R. (Ed.), Identifying marine phytoplankton. Academic Press, San Diego, pp. 5–385.
Horner, R. A. (2002) A Taxonomic Guide To Some Common Marine Phytoplankton, Biopress Limited, United Kingdom
Iwataki, M., W. M. Lum, K. Kuwata, K. Takahashi, D. Arima, T. Kuribayashi, Y. Kosaka, N. Hasegawa, T. Watanabe, T. Shikata, T. Isada, T. Y. Orlova and S. Sakamoto (2021) Morphological variation and phylogeny of Karenia selliformis (Gymnodiniales, Dinophyceae) in an intensive cold-water algal bloom in eastern Hokkaido, Japan in September–November 2021. bioRxiv preprint. https://doi.org/10.1101/2021.12.13.472515