道東の赤潮 Red tides in the sea of east Hokkaido
Rangkaan topik
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海水中の植物プランクトンが異常に増殖して,海の色が変わって見える現象を指す
珪藻,ラフィド藻,渦鞭毛藻が代表的なグループ
プランクトンの種類により赤褐色,茶褐色などの異なる色を呈する
瀬戸内海,有明海など西日本の内湾域で報告が多い
高度経済成長期に栄養塩(窒素,リン)や有機物の排出によって,赤潮が急激に増加した
排水基準の強化により,発生件数は減少している
漁業被害をもたらす
魚がエラに障害をおこして呼吸できなくなる
プランクトンの分解に酸素が消費され,酸欠になる
プランクトンが作り出す毒素が作用する
今回の赤潮は,閉鎖性海域ではない外洋域(開放域)でのモノであり,国内では報告例がないのでは?
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2021年9月13日に厚岸湾内で赤潮発生を確認
北海道大学厚岸臨海実験所の伊佐田准教授が発見
優占種がKarenia selliformis(カレニア・セリフォルミス)であることを確認(Iwataki et al., 2021)
カレニア・セリフォルミスの赤潮は国内で初めての報告
甚大な漁業被害が発生
2021年12月10日時点の北海道の発表では,ウニ2,800トン,サケ28,000尾など合計81億円の被害
道立総合研究機構 釧路水試が十勝沖合24 km、水深130 m地点の海底で底生生物「ホシムシ」の大量死を発見(12月10日 北海道新聞)
道立総合研究機構の発表では,11月22日時点では赤潮がほぼ終焉した可能性が高い(道総研 中央水産試験場)
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JAXAの気候変動観測衛星「しきさい」のデータから,海表面の植物プランクトン量の指標となるクロロフィルの分布の時間変化を把握することができます。
その結果,植物プランクトン量が多い海水が北方領土周辺から道東沿岸に流れてきているように見えます。これは寒流である親潮の流れに乗って赤潮が移動してきたことを示唆します。
2021年9月4日
2021年9月16日
2021年10月9日
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2020年9月下旬にロシア・カムチャッカ半島周辺海域で赤潮が発生
優占種はカレニア・セリフォルミス
このカレニア・セリフォルミスと2021年北海道赤潮のカレニア・セリフォルミスは遺伝情報が100%一致(Iwataki et al., 2021)
赤潮の一部は親潮の流れに乗って数か月後に北方領土周辺海域に到達する可能性(Kudoda et al., 2021)
2021年7~8月に北海道周辺を含む太平洋の広範囲で海洋熱波が発生
例年より水温が~5℃上昇する過去最大級の海洋熱波
海洋熱波と赤潮発生の間の因果関係の有無は不明
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発生時期 海域 原因種 推定された発生要因 1972年9月 十勝川河口沖 渦鞭毛藻キムノディニウム属 大雨による河川からの出水のあと,静穏な日が続いたため,河川由来の栄養塩が海面付近に滞留した 1983年9月 浦幌町~えりも町 渦鞭毛藻キムノディニウム属 同上 1985年9月 十勝川河口沖~大樹港沖 渦鞭毛藻キムノディニウム属・プロロケントルム属 同上 1986年9月 歴舟川河口沖~豊似川河口沖 ラフィド藻ヘテロシグマ・アカシオ 同上 2015年10月~11月 函館湾 渦鞭毛藻カレニア・ミキモトイ 九州,山陰などの日本海側で発生した赤潮の一部が暖流である対馬暖流にのって来遊して増殖した 2016年7月 函館湾 ラフィド藻ヘテロシグマ・アカシオ 2018年7月 函館湾 ラフィド藻ヘテロシグマ・アカシオ 2021年9月~11月 道東太平洋岸 渦鞭毛藻カレニア・セリフォルミス