褐藻類(コンブなど)ブルーカーボン
トピックアウトライン
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私も、Boydらの指摘すること、とくに「表層の栄養循環を変えて表層生態系を変えてしまう可能性」に着目しなければならないと考えています。なぜなら、海洋の基礎生産(海洋植物が光合成で有機物を生産すること)は、基本的に、表層への栄養成分(窒素、リン、ケイ素、鉄)の供給量に制限されているからです。(海洋の栄養循環については、本LASBOSの海洋化学のコースで学んでください) つまり、どこかで大型藻類が大きく繁茂すれば、それだけ栄養成分が吸収され、海水中の栄養成分が減ってしまいます。そして、別の場所の基礎生産が減る可能性が高いのです(絵3)。したがって、ブルーカーボンを評価する際には、炭素の流れだけでなく、栄養成分の窒素やリンの流れも同時に追う必要があるのです。従来のブルーカーボン研究では、この点が圧倒的に不足しているのです。
絵3 藻場(褐藻類など)の一次生産量が小さければ、藻場が吸収する栄養成分は少ない(上)
藻場の一次生産量が増大すれば、藻場が多くの栄養成分を吸収(下)
それに応じて、植物プランクトンによる一次生産量が増えたり(上)、減ったりする(下)藻場が海洋生態系に果たす役割を考えれば、藻場が増大することは、間違いなく良い効果をもたらすでしょう。しかし、藻場の一次生産量が増えれば、それに比例して、周辺海域全体での炭素隔離量が増えるとは限りません。植物プランクトンによる一次生産量が減る可能性があるからです。繰り返しますが、炭素隔離効果が小さいとしても、藻場が増えること自体はとても良いことは間違いありません。
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褐藻類ブルーカーボンは、SDGs 13(気候変動に具体的な対策を)に関係します。ブルーカーボンの取り組みを、間違った方向に行かせてはなりません。正しい方向に導くには、気候変動の対策に対して、確かな科学的な根拠を与える必要があります。少し立ち止まってでも、シッカリ調べるべきです。本コース(褐藻類(コンブなど)ブルーカーボン研究)は、海洋科学的なアプローチでブルーカーボンを理解して、ブルーカーボンに科学的根拠を与える研究を紹介します。(研究を始めたばかりなので、その結論は出ていません)海洋科学としてブルーカーボンを捉えていること、海洋生態系を豊かにすることにも関連するので、SDGs 14(海の豊かさを守る)にも関係しています。
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本コースでは、褐藻類ブルーカーボンに関する情報をまとめつつ、今後、取り組むべき課題を紹介しています。従来であれば、取り組むべき課題(研究のアイデア)は秘密にしたまま研究を進め、研究成果が出てから、全てを公開することでしょう。しかし、2030年に向けたSDGs対応の取り組みでブルーカーボンが注目されている昨今、従来のやり方でブルーカーボン研究を進めているようでは、科学界として対応が遅れるのは明白です。そのため、研究アイデアを公開して、仲間やライバルを増やして進めることで、SDGs対応に貢献しようと思った次第です。
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