低利用資源・紅藻類からの抗酸化物質の調製
Rangkaan topik
-
先のコース“低利用資源・紅藻から紫外線防御物質の調製法の開発”で、紫外線に常に晒されている紅藻類は、紫外線防御物質としてマイコスポリン様アミノ酸(MAAs)を含むことを紹介しました。本化合物は高い安定性を有しますが、100℃などの高温で加熱すると分解されることが知られています。さて、分解されるとMAAsはどのような化合物になるのでしょうか。
本研究では、低利用資源の紅藻ダルスからMAAsを調製して、加熱によりどのような化合物になるのか、そしてその機能性の一つとして抗酸化活性について調べました(図1) 。 -
紅藻ダルスより2つのMAAs、ポルフィラ-334及びパリシンを調製しました。それを水に溶解して120℃で30分間加熱しました。MAAsは310~360 nmに吸収極大波長を示しますが、加熱処理されたものはその波長を失い、210~225 nmに吸収極大波長を示すようになりました。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)においても化合物の溶出時間に違いが生じておりました(図2)。
-
MAAsの構造が加熱により変化していることがスペクトル分析及びHPLCの溶出時間から分かりました。そこで質量分析及びNMRを用いて構造解析を行いました。加熱処理パリシンはパリシンの5番目の炭素原子からヒドロキシ基を失った構造であると推定されました(図3)。
-
MAAsは紫外線防御作用に加えて抗酸化活性を有しておりました。加熱処理MAAsは紫外線防御作用を失っていましたが、抗酸化作用があるのかについて検討しました(表1)。その結果、加熱処理後の方が処理前に比べて抗酸化活性が上昇していました。特に、MAAsの抗酸化作用はアスコルビン酸と比較して酸性側で弱かったものが、加熱処理後のMAAsでは幅広いpHでアスコルビン酸と同程度の抗酸化活性を示すことが分かりました。
-
MAAsの機能性として、紫外線防御作用と抗酸化活性を明らかにしてきました。加熱処理MAAsは紫外線防御作用を失いましたが、幅広いpHにおいて強い抗酸化作用をもつ化合物へと変化したことが明らかになりました。先行研究として海苔のポルフィラ-334からも類似の化合物が生じております
(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0308814608010650)。 -
•MAAsを多く含む紅藻の探索
•MAAsの紫外線防御作用以外の機能性の探索
•MAAsポリマーの作製 -