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  • Zoomのオンライン授業  6月3日:9:00~ (出席は取りません)ELMSコースに取り組むだけでもOK

    Zoomトピック: 海洋生物地球化学     https://us04web.zoom.us/j/9049869726

    ミーティングID: 904 986 9726      パスワード: kaiyouseib




  • 地球の酸素

    •  気候変動は「炭素循環の歴史」と説明しました。それに対比させるなら、生命進化は「酸素循環の歴史」といえるでしょう。一般的には、”地球の酸素循環”  が注目を集めることはありませんが、炭素循環と対に考えたほうが楽しいです。 地球の酸素について、炭素と比較して、いくつかの知見を紹介しましょう。

       酸素と炭素の大きな違いは、地球における存在比です。地球を構成する元素のうち、鉄(32%)に次ぐのが酸素(30%)です。酸素のほとんどが、地殻中やマントルにSiO2やMgOとして存在します(Morgan, PNAS, 1980)。ちなみに、鉄の多くは核に存在し、地殻やマントルにも酸化鉄として存在します。



      Garrels, et al., Controls of Atmospheric O2 and CO2: Past, Present, and Future, American Scientist, 64, 306-315 (1976)よりデータを引用して、オリジナルの図をつくりました。地球の酸素量については、地球惑星科学の(何かの)教科書より引用したデータです。海水中の酸素量は、海水の平均酸素濃度を 0.2 mmol/kg として計算しました。



  • 海洋の酸素

    •  海洋に膨大に存在する二酸化炭素と水のうち、ごく一部を海洋植物が光合成に利用して有機物を合成し、ひきかえに酸素分子(O2)を吐き出しています。いっぽう動植物は呼吸により酸素と有機物を消費して、二酸化炭素と水を吐き出しています。また、海水中の酸素の大部分が大気から吸収したものであることに、注意してください。






    •  ある水塊が表面に存在していたときの酸素濃度を初期濃度 [O2]0 として、その水塊が深層3000mまで移動したとします。そして我々が海洋観測を行い深層3000 mの水を採取して酸素濃度[O3000m]を測定しました。その水塊が3000mまで移動する間に呼吸によって消費された酸素量は、

      【呼吸によって消費された酸素量】= [O2]0 - [O3000m]

       大気中酸素濃度(一定値)と水温を決めれば、[O2]0  を計算で求めることができます。





    •  大気中酸素に対する、海水中の酸素飽和濃度の計算式です。

       以下に、飽和濃度(実線)と、表面海水で観測される酸素濃度(矢印 (↑) )を示しました。






    •  海水中での酸素消費量は、「ある時刻(0)における酸素の初期濃度」から、「ある時刻Tにおける酸素濃度」を差し引けば、時刻0→Tにおける酸素消費量を求めることができます。ただし、光合成による酸素生成が無い場合に限ってのみ、このことが成り立ちます(下図左)。

       海水中では、呼吸による酸素消費と光合成による酸素発生が同時に起こっています。これらを区別することはできません。つまり、「本当の消費量」や「本当の生成量」を知ることはできないのです。消費の方向を正にすれば、「未知なる本当の消費量」>「未知なる本当の生成量」 であれば、「正味の消費量」>0 になります。これは、光合成に対して呼吸が勝っていたことを意味します。逆もあります。


          



    •  大気との接触を断った亜表層にも微弱な光が届いており、光合成により酸素が生産されているのです。したがって、先に求めた“酸素消費量”つまり【みかけの酸素消費量】とは、【呼吸により消費された酸素量】から【光合成により生産された酸素量】を差し引いた量となります。ここで、みかけの酸素消費量のことをApparent Oxygen Utilization (AOU)と呼びます。北太平洋中緯度の酸素濃度が決まる理由を下の図に表しました。AOUに相当するのは、下の右図の矢印の長さになります。




  • 溶存酸素の全球分布

    •   酸素極小層がみられる水深750mと、深層の水深3000mにおける、溶存酸素濃度の全球分布を示します。
      (上と下の図で、カラーバーのレンジが異なるのに注意してください)

       水深750 mでは、大西洋のアフリカ沿岸で酸素濃度が低くなっています。北西太平洋の亜熱帯(北緯30度付近)で周囲よりも酸素濃度が高くなっているのが特徴です。なぜでしょうか。

        



    •  全海洋の水深750mと3000mのみかけの酸素消費量(AOU)の分布図を示します。おおよそ、酸素濃度の全球分布と、逆の関係にあります。

        



    •  海洋化学では各パラメタの鉛直分布を考えるのが定石だから、溶存酸素(DO)とみかけの酸素消費量(AOU)の鉛直分布を並べてみます。①と②のグラフ、どちらが北大西洋、北太平洋か、即答できますか?




  • DO(溶存酸素)採水 アレコレ

    • 海洋観測の現場では、溶存酸素測定用の採水作業が毎度のようにあります。正しい操作が求められています。以下に、ちょっと簡易的なやり方を紹介します。


      現場で覚えてくださいね。



    • 「瓶番号11 水温1.2℃」 これを、観測現場では、どのように言うでしょうか。これをスラスラいえたら、プロっぽいです。私は、必ず間違えるので、現場では言わないようにしています。