海洋の酸素
セクションアウトライン
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海洋に膨大に存在する二酸化炭素と水のうち、ごく一部を海洋植物が光合成に利用して有機物を合成し、ひきかえに酸素分子(O2)を吐き出しています。いっぽう動植物は呼吸により酸素と有機物を消費して、二酸化炭素と水を吐き出しています。また、海水中の酸素の大部分が大気から吸収したものであることに、注意してください。
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ある水塊が表面に存在していたときの酸素濃度を初期濃度 [O2]0 として、その水塊が深層3000mまで移動したとします。そして我々が海洋観測を行い深層3000 mの水を採取して酸素濃度[O2 3000m]を測定しました。その水塊が3000mまで移動する間に呼吸によって消費された酸素量は、
【呼吸によって消費された酸素量】= [O2]0 - [O2 3000m]
大気中酸素濃度(一定値)と水温を決めれば、[O2]0 を計算で求めることができます。
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上の式をエクセルに入力したファイルです。
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大気中酸素に対する、海水中の酸素飽和濃度の計算式です。
以下に、飽和濃度(実線)と、表面海水で観測される酸素濃度(矢印 (↑) )を示しました。
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海水中での酸素消費量は、「ある時刻(0)における酸素の初期濃度」から、「ある時刻Tにおける酸素濃度」を差し引けば、時刻0→Tにおける酸素消費量を求めることができます。ただし、光合成による酸素生成が無い場合に限ってのみ、このことが成り立ちます(下図左)。
海水中では、呼吸による酸素消費と光合成による酸素発生が同時に起こっています。これらを区別することはできません。つまり、「本当の消費量」や「本当の生成量」を知ることはできないのです。消費の方向を正にすれば、「未知なる本当の消費量」>「未知なる本当の生成量」 であれば、「正味の消費量」>0 になります。これは、光合成に対して呼吸が勝っていたことを意味します。逆もあります。
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大気との接触を断った亜表層にも微弱な光が届いており、光合成により酸素が生産されているのです。したがって、先に求めた“酸素消費量”つまり【みかけの酸素消費量】とは、【呼吸により消費された酸素量】から【光合成により生産された酸素量】を差し引いた量となります。ここで、みかけの酸素消費量のことをApparent Oxygen Utilization (AOU)と呼びます。北太平洋中緯度の酸素濃度が決まる理由を下の図に表しました。AOUに相当するのは、下の右図の矢印の長さになります。
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