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    •  このレポートひな型では、まず、東北沖太平洋に設定した南北ライン(A-Line)の観測結果(水温、塩分、密度)を南北鉛直断面のカラーコンター図にして、全体像を視覚的に捉えることにしました。水温については、気象庁HPより当該年月の水平分布図が提供されています。気象庁の図も参考にしながら、水がどのように移動していたのかを解釈します。しかし、水温以外の塩分や生化学パラメタ(栄養塩やクロロフィルa)については、気象庁から提供されていません。A-Lineの観測結果から、あなたが独自に解析をして理解を深めてください。解析するポイントを探す際には、まず、複数パラメタの鉛直断面のカラーコンター図を並べて見て、共通する特徴、異なる特徴、面白そうな特徴を見出してください。そうしたら、その特徴を鮮明に炙り出すのに必要な図や表を独自に作るとよいです。何かを基準とした平均値(例えば、表層水中の平均、暖水塊や冷水塊での平均など)をとって、特徴を数値で表すのもよいです。ただし、これらの特徴を解釈するには、海洋学の知識が必要になります。「LASBOS」サイトの海洋学コース(https://repun-app.fish.hokudai.ac.jp/course/view.php?id=457)などを利用して学んでください。


       高校の授業(課題研究)にて、本サイトを参考にして研究に取り組んだ方がいらっしゃいましたら、大木淳之(ooki◎fish.hokudai.ac.jp) (◎を@に変換)まで連絡いただけると幸いです。 課題研究「~のテーマで」で参考にしました、と簡単でよいです。

  •  まずは、レポートのひな型(例)をダウンロードして、眺めてみましょう。

    (少し本気モードでレポート例を書いてしまいました。初心者の皆さんは、もっと簡単化してもよいかもしれません。ただし、引用文献を提示できていません。国際雑誌の論文だと、入手にお金がかかってしまうので、悩みどころ。大学だと雑誌社と契約しているので、入手が楽ですが、、、)

    • 1)解析データの収集とグラフ化

      LASBOS「Ocean Data Viewで北西太平洋の海洋データ(A-Lineモニタリング)解析」のコースを参照してください。

      1-1)海洋データのグラフ化ソフト(Ocean Data View: ODV)のインストール

      LASBOS: ODVインストールのページを参考にして、ODVを個人PCにインストールしましょう。


      1-2)解析データの入手

       2014年7月の、A-Lineモニタリングデータ(CTDと栄養塩)を使います。A-LineモニタリングHPから、独自にデータをダウンロード、データファイルを整理してグラフ化するのが正統派です。しかし、データ整理に失敗すると先に進めないので、上のLASBOSコースから、ODV形式に整理したデータをダウンロードできるようにしています。


      1-3)塩分、水温、密度の南北鉛直断面図を作成

       2014年7月のA-Lineモニタリングデータより、X軸(水深)、Y軸(緯度)、Z軸(塩分、水温、or 密度)の図を作ります。作り方は、LASBOS「ODVで鉛直断面図を作る」のコースを参照しましょう。


    • 4)南北鉛直断面図を論文に貼り付ける形式に調整

       ODVソフトで図を作り、その図を.jpegや.pngなど、ピクチャファイルで保存します。そのまま貼り付けるだけだと、美しい論文に仕上がりません。

      4-1)鉛直断面図をパワーポイントに貼り付けて調整

      以下のように、パワーポイントの空白ページを用意して、ODVで作ったグラフを貼ります。図を上下に並べて、適当なサイズになるよう、まとめてサイズを小さくします。



      4-2)各図のカラースケールバーの横にパラメタの名前と単位を記したテキストを配置

      パワーポイントの図形描画でテキストボックスを選び、パラメタ名と単位を入力します。適当なフォント・サイズにしてから、90度回転させます。それを、カラースケールバーの横に配置しましょう。ODVで作った図の右上にもパラメタ名がありますが、それは、消してしまいましょう。図形描画機能で、長方形を作り、その長方形を白色にします。白色長方形を、消したい文字の上に配置します。

      4-3)図から読み取られる特徴的な箇所を強調

       水塊区分の水温・塩分範囲から、黒潮系水(KW)と津軽暖流水(TW)、中冷水(CL)に相当する領域を探します。ダウンロードしたのデータファイルを見て水塊区分をしてもよいです。各水塊について、大よその境界を長方形(太線枠)で囲みました。(あまり細かい箇所まで水塊区分しようとすると大変です。とりあえず、目立つところ、大まかでよいです)

    • 5)東北沖太平洋(親潮黒潮混合水域)の水塊区分の図を貼り付け(論文中の図2)

       Hanawa and Mitsudera (1987)により、混合水域における水塊区分の水温・塩分範囲が示されています。その図を引用します。引用元を記すことを忘れずに。


      6)A-Lineモニタリングの観測線の図を論文に貼り付け(論文中の図1)

       A-LineモニタリングのHPより、観測線が示された図を引用するか、ODVの水平図を論文に貼り付けましょう。

    • 7)論文に文章を入力

       書きやすいところから、書き進めてみましょう。まずは、論文の章の順序に従って書き進めてみましょう。

      7-1)はじめに

      研究で題材にした対象を説明する。本論文の場合、対象(キーワード)は以下になります。これらについて、書物や論文をあたって調べ、その内容をまとめます。

      対象(キーワード):A-Lineモニタリング、太平洋、東北沖太平洋混合水域、親潮、黒潮、津軽暖流水、沿岸親潮、植物プランクトン、光合成、クロロフィルa、栄養塩など

       これらの対象に関連して、あなたの関心事も記しましょう。あなたの関心事と、研究対象(キーワード)がどのように関連するのかも説明しましょう。そして、「そこで、本研究では、A-Lineモニタリングのデータを解析し、~~~を明らかにすることを目的とした。」のように記して、「はじめに」を締めくくりましょう。

      ※ 「はじめに」は、研究の最終段階で、再度見直し調整することになるので、最初の段階から完成を目指さなくてよいです。最初の段階では、「こんなことを調べたいなぁ。」くらいのメモ書きでもよいです。

    • 7-2)手法

       記せるところから、書いてゆきましょう。後回しにしてもよいです。

      ※ もし、執筆者(あなた)自身で、何か実験をやったならば、実験ノートに、どのような作業を行ったのか、詳しく詳しく詳しく、記録しておきましょう。その情報が論文執筆に欠かせません。


      7-3)結果と考察

      結果の記し方のコツ: 「高い」「低い」「多い」「少ない」のような言葉だけでなく、「○○が△△に比べてX μmol/Lだけ高かった。」や「○○の△濃度(a μmol/L)が2012~2018年の○○の平均△濃度(b  μmol/L)に対してY倍も高かった。」のように、数値を用いて、具体的かつ丁寧に記すとよいです。そして、「2014年の○○が16年平均に対してY倍も高かった理由として、以下二つ可能性を考えた。一つ目の可能性は、~~~である。二つ目の可能性は、~~~である。これらの可能性について、以下に考察をする。」のように、結果から考察に展開する流れを明確にするとよいです。

      課題研究レポート例1)の本文中に、いくつか、興味深い特徴をまとめました。そのような特徴が生じる理由を考えるのが、「考察」になります。あたたの「想像」に終始するのはNGです。過去の知見を引用して、複数の知見を組み立てて、論理的に説明する必要があります。その際、定量的に(数値を用いて)、具体的に説明することが大事です。

    • 8)人工衛星観測や全球解析データの公開情報を利用

      人工衛星により、海から放射される電磁波を調べて、海面水温やクロロフィル濃度が求められています。

      気象・海象データ、海洋観測結果を解析して、三次元的な海の流れが計算されています。水の流れから、水温分布や塩分分布まで計算されています。これらの計算結果も、研究のデータ解析に利用することができます。

      人工衛星観測や全球解析データの利用(⇦クリック!)

      とても大事! 全海洋の水温や塩分値が計算されて、美しい図で示されると、それが真実かと勘違いしてしまいます。A-Lineモニタリングデータを解析しているのであれば、そちら(観測データ)が真実であることを忘れずに。実際の海洋では、全球データ解析では再現できないような、ローカル(局所的で、微細)な現象が起こっています。全球データ解析結果は、メソスケール(数十 km~)の水の流れを把握するにはよいでしょう。

    • 9)課題研究レポート例1)の先に進む

       レポート例1)では、見栄えのする、南北断面鉛直分布のカラーコンター図を示しました。カラーコンター図を作ると満足感が得られます。満足して終わってはダメです。カラーコンター図は、面白そうな特徴を見出し、より深く解析する箇所を探すために利用してください。つまり、解析のインスピレーションを得るための図と考えましょう。

      鉛直分布図の作成 海洋学の基本は、鉛直分布図(深度がY軸、濃度や温度がX軸の折れ線グラフ)を作ることです。鉛直分布図をベースとした研究解析は、「課題研究レポート例2:建設中」をご覧ください。


    • 本課題研究は、高校の教育課程で言えば、「地学」の範囲になります。しかし、海洋学者を専門領域で分けると、「物理学:海洋物理学」、「化学:海洋化学」、「生物学:海洋生物学」の3つです。したがって、高校理科全ての範囲に及ぶことを知ってください。

      本課題研究は、海洋生態系を支える植物プランクトンによる基礎生産を対象としています。水塊区分にしたがって、回遊魚が移動していることを考えれば、水産漁業とも密接に関係します。地域の水産業は、物流や観光にも深くかかわります。したがって、経済学や社会学にも関係します。水産物加工や漁業工学など、栄養学や工学にも関係します。

      漁村の文化、漁師の浜歌、海を題材にしたポップ音楽や文学作品、海の絵画などありますから、文化人類学にも関係しますね。

      日本は島国ですから、他国や公海との境界は海にあります。領土問題や国際政治にも海が関係します。したがって、政治学、法学にも関係します。

      このような点を頭に置いておくと、分野横断的な視点を持つことができると思います。


  •  本ページは、大学生や高校生、中学生による課題研究をサポートするために開設しています。本ページを利用して課題研究に取り組んでいる生徒さん、先生からの質問を受け付けます。大木淳之(ooki◎fish.hokudai.ac.jp ◎を@に代えてメール)に連絡ください。なるべく、〇〇大学〇〇学部の○○です、〇〇高校〇年生の〇〇です、と名乗ってくれると助かります。私の方で、受信メールを見逃してしまう可能性があるので、数日経っても返事がないときは、再度メールするか、電話ください。(電話番号は、どこか検索したり、北大水産学部に問い合わせればわかると思います)