Section outline

    •  「おしょろ丸」の調査・研究専用区画の配置を図5に示します。幅広い研究ニーズに対応できるようそれぞれの区画が異なる特徴を備えています。調査・研究の主要な舞台となるのは、船尾楼甲板の中ほどを占める研究区画です。三つの研究室からなるこの研究区画は、調査・研究航海を実行するうえでの動線を考慮し、研究員居住区や観測作業甲板と同じ階層に配置されています。


    • 5 調査・研究区画の配置


    •  「第一研究室」の詳細を図6に示します。CTDや各種音響計測機器といった船に常設されている観測機器の制御装置が集約されており、それら機器のオペレーションやデータ収録・処理をこの部屋で行います。電子機器類の故障の原因となる水気や塵を持ちこまないよう、入り口で靴や合羽などの装備品を脱いで入室することと定められています。壁面に設置されたモニタにはマルチディスプレイシステムが採用されており、それぞれのモニタにどの観測機器の画面を表示するか自由に選択することができます。


    • 6 「おしょろ丸」第一研究室 配置図



    • 第一研究室(VR動画)

    •  「第二研究室」の平面図を図に示します。三つの研究室の中でも最も広い「第二研究室」は海水、生物、堆積物といった水気を含んだ試料を扱うための実験室です。第一研究室のように水気を持ち込まない実験室を「ドライラボ」というのに対し、第二研究室のような実験室を「ウェットラボ」と呼んでいます。床面は防水加工されており、汚れや海水に含まれる塩分を水で洗い流せるよう排水溝も設けられています。いくつかの実験台のほか、シンク、冷凍冷蔵庫、ドラフトチャンバー(有害な気体が発生する作業を行うための排気機能付き実験台)、超純水製造装置など、調査に必要な基本的な設備が常設されています。その一方で、乗船者が持ち込んだ資機材を自由にアレンジして実験等ができるように実験台の上は何も常設されていない状態にしてあります。実験台や天井、壁面にはボルト穴が開いており、資機材を固縛するための金具を自由に着脱できます(図8)。このボルト穴の配置寸法はすべての実験台で共通しています。あらかじめこの寸法に合わせた穴を持つ分析機などを用意すれば、簡単に本船の実験台に固縛することができます(JAMSTEC白鳳丸の寸法とも共通)。また、実験台の天板には木製の合板が使用されているので、木ネジを直接打ち込んで機材を固定することもできます。さらに、実験台は床面から着脱可能なため、実験台を撤去して大型の実験機材を搬入・設置することも可能であり、研究室全体を航海の目的に合わせてアレンジすることができます。

      シンクには清水蛇口だけでなく、船底からくみ上げられた研究用の海水を供給する蛇口が備わっています。シンクのすぐ脇に設置された表層海水モニタリングシステムは、船底から汲み上げられた表層海水の特性(水温・塩分・濁度・クロロフィルa濃度)を航海中の全航程において連続的に計測しています。




    • 7 「おしょろ丸」第二研究室 配置図



    • 実験台の着脱式アイボルト

      a)装着前 b)ボルト穴とアイボルト c)装着後



    • 第二研究室(VR動画)

    •  第三研究室は別名「環境制御室」とも呼ばれ、調整された環境条件(明るさ・室温)で実験を行うための部屋です。屋外への出入り口がある第二研究室では室温の変動が避けられないため、安定した室温で進めなければならない作業(海水の塩分測定など)を行う際に第三実験室が利用されます。この部屋には窓がありませんので、照明を落として扉を閉め切れば暗室として使うこともできます。

       

       第二研究室に隣接している「採水器室」は、CTD採水システムなどの観測機材を格納する区画です。採水器室の壁面には採水器の架台が設置されており、最大36本の12リットルのサイズまでのニスキン採水器を並べて固定することができます。採水器室の観音開きの扉を開ければ、すぐそこが観測作業を行う甲板です。



    • 11 採水器室(VR動画)

    •  端艇甲板の暴露部には可搬式の実験室である「コンテナラボ」が設置されています。コンテナラボは輸送コンテナを実験室に改造したもので、ウェット・クリーン・冷凍・多目的の4つのタイプから航海の目的に合わせて必要なものを一つ選んで搭載します。


    • 12 コンテナラボ(VR動画)

    •  上甲板後部には「低温実験室」(室温範囲:0~10℃)と二つの「凍結試料庫」(庫内温度範囲:-50-20℃)が設けられています。低温実験室は、低温条件下での実験に使用するほか、冷蔵保存したいサンプルの保管庫としても利用されます。凍結試料庫は二つの区画に分かれており、性質の異なる試料が混在することで試料が汚染されてしまわないよう、それぞれ中に入れる試料を区別しています。すなわち、化学分析用の海水のような他の試料からの汚染を避けなければならない試料を保管する区画と、魚類の標本といった汚染源となりやすい試料を保管する区画とに使い分けられています。


    • 13 低温実験室(VR動画)