單元大綱

    •  海洋観測を行う際に必要となる設備には、機器を吊り上げるための「クレーン」、海中で機器を昇降させるための「巻上機(ウインチ)」、海面上への機器の振り出しや曳航に用いる「ダビット」「ブーム」などがあります。「おしょろ丸」に装備されている観測・漁労設備の配置を図1に示します。


    • 1 「おしょろ丸」 観測設備配置図

      No.1ウインチ(多目的)

      ②No.2ウインチ(CTD8,000m

      ③No.3ウインチ(CTD7,000m

      ④No.4ウインチ(観測用)

      船尾Aフレーム(門型クレーン)

      観測ウインチ用ダビット

      ⑦CTD用多関節クレーン

      ⑧船首部ネット曳航用ブーム

      ⑨ウェルデッキ用補助ダビット

      ⑩曳航用ブーム

      ⑪漁労用多関節クレーン

      ⑫起倒式スリップウェイ

      ⑬トロールウインチ

      ⑭ウインチコントロールルーム



    • 左舷作業甲板(VR動画)


    • 船尾作業甲板(VR動画)

    •  「おしょろ丸」には4台の観測用ウインチが搭載されており、それぞれNo.1からNo.4までの番号で呼び分けられています(表1)。すべてのウインチは、端艇甲板後部にあるウインチコントロールルーム(図1-⑭)で遠隔操作することができます。No.1ウインチ(図1-①)は後述するAフレーム(図1-⑤)を使った観測に使用されるもので、大きな荷重のかかる観測にも耐えうるよう、4つのウインチの中でもっとも丈夫なワイヤロープが巻き込まれています。No.2ウインチ(図1-②)とNo.3ウインチ(図1-③)には共にアーマードケーブル(同軸ケーブルを鋼線で被覆したもの)が巻き込まれており、主にCTD採水システムによる観測に用いられます。アーマードケーブルに接続された機器は、そのすぐ隣に設置されている多関節クレーン(図1-⑦)で吊り上げられ、左舷側から海中に投入されます。No.4ウインチ(図1-④)は汎用の観測用ウインチで、プランクトンネットや小型の採泥器などによるサンプリングに使用されます。

       いずれのウインチも長さ7000-8000mのワイヤロープ(あるいはアーマードケーブル)を装備しており、北太平洋であれば一部の海溝部分を除くすべての海域において観測機器を海底まで到達させることができます。


    • 「おしょろ丸」観測用ウインチ仕様


    •  船尾の作業甲板には門型の大型クレーン「Aフレーム」が備わっています。AフレームはマルチプルコアラーピストンコアラーソリネットMOHTといった大型で重量の大きい観測機器を吊り上げ、海面上に振り出す際に使用されます。観測機器を船尾に振り出すときのAフレームの動きを図4に示します。Aフレームの頂部に取り付けた滑車にウインチのワイヤロープを通し、その先端に観測機器を接続します。Aフレームと連動して滑車が動くことで観測機器を移動させます。Aフレームは移動速度の微調整ができるため、低速での速度調整の難しいウインチで吊り上げる方法よりも安全に甲板作業を行うことができます。また、一般的なクレーンが旋回によって弧状に吊り荷を移動させるのに対し、直線的に吊り荷を移動させることができるのも、Aフレームの特徴のひとつです。

    • Aフレームの動作

      4 Aフレームの動作

    •  舷側に設けられたブーム(図1-,⑩)は、ニューストンネット稚魚ネットなどを水面付近で曳航する際に使用されます。これらのブームを使用することで、船尾から曳航した場合と比べて船が航行することによって生じる影響(船首波およびプロペラの攪拌作用、船体からの汚染物質の混入など)を抑えることができます。

       漁業的な手法によるサンプリングにも対応できるよう、「おしょろ丸」にはトロールウインチ(図1-⑬)や起倒式スリップウェイ(図1-⑫)、自動イカ釣り機、集魚灯などの漁労設備も装備されています。