音波を用いることで、広い海の中の様子を迅速かつ広範囲に捉えることができます。音波とは振動する物体が空気や水といった媒質の密度を変化させ、その密度の変化が隣接する媒質中を伝わっていくことによって生じる波動(粗密波)です。私たちの耳で聞くことのできる音(可聴音:20Hz~20kHz)よりも高い(周波数の大きい)ものを特に超音波といいます。
音波には物質の境界面にあたると跳ね返る性質があり、跳ね返ってきた音波をエコー(echo:
反射波)といいます。音波信号を発信してからエコーが返ってくるまでの時間から対象物までの距離を割り出すことができ、そのようにして離れた場所にある物標を探知する装置がソナー(Sonar: Sound Navigation and Ranging)です。
測深(水深を測ること)には、古くは水面から海底までロープや鋼線を伸ばす方法(錘測法)がとられていました。ソナー技術を応用して開発された「音響測深機」の登場によって測深の精度および効率が格段に向上し、数千メートルもの大水深であってもわずか数秒のうちに測深できるようになりました。図1に音響測深機の概念図を示します。船底などの水面近くに設置した送受波器から発信された音波は水中を伝搬していき、やがて海底面で反射します。反射して戻ってきたエコーを受信し、発信から受信までに要した時間(伝搬時間)に音速を掛け合わせれば送受波器と海底の往復の距離(伝搬距離)が算出され、その半分が水深となります。検知対象を海底から魚類などの水産生物まで拡張した魚群探知機は、効率的に漁獲をあげるのに不可欠な機器として漁業者に広く利用されています。