採水器は時代と共にいくつかの種類が考案されてきましたが、海水を貯める「採水筒」と採水筒を閉じる「蓋」とからなるという点で基本構造に変わりはありません。
20世紀初頭から広く普及した採水器として、金属(黄銅)製のナンセン転倒採水器(
Nansen bottle)がよく知られています。これは、採水器を転倒させることによって上下のバルブが閉まる機構を持つもので、転倒温度計
※と併用することで採水深度とその場の水温を同時に計測できることから、海洋観測の現場で広く用いられました。
20世紀の終盤に入ると、分析項目の多様化や分析精度の向上が進むにつれ、採水手法にも改良が求められるようになります。そのため、金属(黄銅)製の為に重たいうえ、採取できる海水の容量が限られていたナンセン採水器は、新しいタイプの採水器に取って代わられるようになります。現在、もっとも広く利用されているのが
ニスキン採水器(
Niskin bottle)で、これは採水筒、蓋ともに塩化ビニル製でサイズバリエーションも
1.2~30Lと豊富です
(図
8)。