單元大綱

    • 2014年5月のクロロフィルa(Chlorophyll-a)の鉛直断面図を描きました(下図)。北側(横軸で右側)で表層のクロロフィル濃度が著しく高いです。データファイルを見ると、27 µg/kgにも達していることがわかります。(下の鉛直断面図では、カラースケールの範囲外になっていて、そのような高濃度が見えていません)外洋の水でクロロフィル濃度が10 µg/kgを超えていれば、植物プランクトンの大増殖が起こっていたといえます。27 µg/kgは、外洋では最高レベルと言えるでしょう。




    •  外洋の表層水でクロロフィル濃度が 1 µg/kg もあれば、そこそこ高濃度と言えます。上のトピックでは、27 µg/kgにも達するデータも含めて図を作ってしまいましたが、そのような極端なデータを含まない 41N以南でグラフを作りました(下図)。クロロフィル濃度のカラーバーの範囲を0~1 µg/kgとしました。同じ緯度範囲で硝酸塩濃度の鉛直断面図を作り、低濃度範囲を見やすくコンター線を加えました。

       このように、何を詳しく調べたいのか、という目的に応じて適した軸範囲を設定しましょう。




      ※ 春季ブルームが終焉した後(7月など)、表層混合層内では栄養塩が枯渇して植物プランクトンが殆どいない状況になります。亜表層には栄養塩が残存していて、辛うじて光が届く水深帯に植物プランクトンが高密度に存在する状況が生まれます。(混合層の変化と基礎生産の説明を参照) 7月のデータで鉛直断面図を作り、そのような状況が見られるか調べてください。

    • 2014年7月のクロロフィル(Chlorophyll-a)の鉛直断面図を描きました。

      7月のクロロフィルは、北海道沿岸に近い北の方(グラフの右の方)では、5月から相変わらず、表層付近でクロロフィル濃度が高いです。(著しく高いことは無くなりました)外洋の南方にて、表層直下でクロロフィル濃度が高いのが特徴です。これは、夏場に良く見られる、亜表層クロロフィル極大(Subsurface Chlorophyll Maximum: SCM)と呼ばれる現象です。その考えられる理由は、こちら「混合層の変化と基礎生産」をご覧ください。





      海洋基礎生産を律速することの多い、硝酸塩(Nitrate)の鉛直断面図を示します。

      図中の白太線は、同月のクロロフィル濃度が0.5 (µg / L)の境界ラインです。

      硝酸塩濃度が、1 (µmol/L)を切っていると、植物プランクトンは栄養塩不足に陥っている可能性があります。南方で見られるクロロフィル濃度が0.5 (µg / L)以上の亜表層クロロフィル極大層では、ギリギリ、硝酸塩濃度が 1 (µmol/L)以上が保たれていそうです。しかし、北方の北海道沿岸では、表層の硝酸塩濃度が1 (µmol/L)未満でも、クロロフィル濃度が高まっていますね。このような不思議なことを解釈するのが海洋化学の面白いところです。(原因がハッキリしないので、言い逃れしているだけとも、、) 表層混合層深度も、これらの鉛直断面図に書き入れると、何かヒントが得られるかもしれません。



    • 全てが合理的に説明できるわけではありません

      スナップショット的な観測(A-Lineモニタリングのように、ある日、ある場所で観測しただけのデータ)で、海水中のクロロフィル濃度と栄養塩濃度の関係を解釈するのは、実は難しいことを知ってください。

      基本的には、

      ・  栄養塩が豊富にあれば、植物プランクトンが栄養塩を消費しながら大増殖します。

      ・  栄養塩が枯渇すれば、植物プランクトンの増殖は制限されます。

      例えば、栄養塩濃度がゼロに近いところで(栄養塩が枯渇した状態で)、クロロフィル濃度が高かった場合、どのように解釈できるでしょうか? 

      解釈A)1週間くらい前まで植物プランクトンが大増殖を続けて栄養塩を消費したため、栄養塩が枯渇してしまった。観測したときは、大増殖した植物プランクトンが(栄養塩に飢えた状態で)表層水中に漂っていた。数日もすれば、大増殖した植物プランクトンは沈降して、表層水から植物プランクトンは無くなってしまうだろう。

      解釈B) 2週間くらい前から植物プランクトンが大増殖を続けて栄養塩を消費してきた。栄養塩は枯渇状態になりつつも、亜表層から栄養塩の供給が続いて、大増殖が継続している。(供給された栄養塩は即座に消費されつくされる) 今後1週間は大増殖が続くだろう。


      スナップショット的な観測結果からだけでは、解釈AとBを分けることができないと思います。このような事を解釈するため、船上で培養実験を行ったり、鉛直的な水の動きを調べるための乱流観測が行われることもあります。

      限られたデータで解析するのが海洋学の常なので、複数の可能性があることを念頭に議論を展開するとよいです。