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    • 海洋応用生命科学部門・水産資源開発工学分野・関研究室の紹介です

    • ※関先生は2024年3月に北海道大学を退職されました。

    •  6  14  SDGs top

       河川から海に流入した泥土は海に入るとすぐに凝集し,稚魚のゆりかごであるアマモ場に堆積してダメージを与えます。濁水の浄化処理には凝集剤を用いますが,従来の凝集剤には生物に有害なものがあります。そこで,生物に対して安全な天然素材を用いた凝集剤を開発によって,海洋生態系の保全および持続的な利用(SDGs6,14)に貢献できると考えています。

       国連では2021年からの10年間を、「海洋科学の10年」に定めて、SDGsに貢献することを目指しています。国連が定める海洋科学には、水産漁業の分野も含まれます。

    • 懸濁物質(Suspended Substance, SS)を含む濁った排水の処理に用いる薬剤(凝集剤)の開発に関する研究です。懸濁物質は浮遊物質ともよばれ,無機懸濁物質と有機懸濁物質があります。

      無機懸濁物質は主に沿岸・河川流域の開発現場,空港建設現場,砕石場などの排水,有機懸濁物質は主に食品加工場の排水や上下水道における処理対象水に含まれます。

      現在使⽤されている凝集剤には,⽣物に悪影響を与えるものがあるので,安全なタンパク質等の⽣物素材から⽣分解性の凝集剤の開発を⾏っています

    • 懸濁物質を含む排⽔に対して,環境大臣(国)が設定した「⼀律排出基準」と,⾃治体が独⾃に制定するより厳しい「上乗せ排出基準」があります。

      一律排水基準は,平均排水量が50 m3/day以上の工場や事業所に適用されます。

      懸濁物質に対する⼀律排出基準は300 mg/kgですが,上乗せ排出基準として以下のような例があります。

      基準値は300 mg/kgでも,平均排水量が50 m3/day以下の工場や事業所にも適用する「上乗せ排水基準」があります。


      上乗せ排出基準の例

      神 戸:40 mg/kg

      横 浜:70 mg/kg

      東 京:120 mg/kg

      名古屋:200 mg/kg

      札 幌:300 mg/kg

    • 懸濁物を除去する薬剤を「凝集剤」と呼ばれています。

      いま使われている凝集剤には以下のようなものがあります。

      ・ポリ塩化アルミニウム(PAC)

      ・硫酸鉄,硫酸バン土(アルミニウム)

      ・ポリアクリルアミド


      しかし,これらには以下のような問題点があります。

      ・アルミニウムは植物根の成長阻害

      ・アクリルアミドは発がん性

    • そこで,私たちの研究室では,生物に対して安全なタンパク質を素材とした「生物分解性凝集剤」の開発に関する研究を行っています。

      下の写真は,日本の一般的な土壌である「珪藻土」の懸濁液を,大豆タンパク質から作った凝集剤で凝集処理した様子です。右のメスシリンダーには凝集剤を加えていません。

      凝集剤を加えると,小さな粒子が凝集体を形成し,速やかに沈降する様子がわかると思います。


    • 次の写真は,富栄養化した湖沼に発生する「アオコ」の「磁性凝集処理」の写真です。

      使っている凝集剤は,上の写真と同じ大豆タンパク質から作った凝集剤です。

      アオコは密度が水に近いので,凝集体を形成しても,なかなか沈降しません。


      そこで,微細な磁性微粒子と共凝集させ,それを磁石で分離する研究を行っています。

      具体的には,まず,アオコの懸濁液に磁性鉄(四三酸化鉄)の微粉末を加えてよく撹拌して均一に混合します。

      そこに凝集剤を加えて撹拌すると,アオコと磁性鉄が一緒に凝集します。これに磁石を近づけると,写真のように共凝集体を分離することができます。



  •  資源機能化学科 SDGs6 SDGS14