Topic outline

  • 概要

    「低利用資源・紅藻から新たなオリゴ糖調製法の開発」で、ダルスに特有の構造を持つキシロオリゴ糖の調製方法を紹介しました。その際の調製方法として市販の酵素を用いていますが、それには多糖を内部から加水分解するエンド型の酵素と多糖の端から加水分解するエキソ型の2種類の酵素が含まれています。エキソ型の酵素はオリゴ糖を単糖のキシロースにしてしまうため、オリゴ糖の収率が低下します。本コースでは、微生物からエンド型の酵素の遺伝子を獲得し、その遺伝子情報を元に大腸菌に酵素を作ってもらうことでエンド型の酵素のみを用意しました。それを用いてオリゴ糖の調製を行いました。


    図1.エンド型およびエキソ型酵素の特性


    • 酵素の調製

      放線菌Streptomyces thermogriseus NBRC100772は温かい環境に生育しています。そのような環境に生息する微生物の酵素は熱に安定なものが多いことが知られています。安定な酵素は失活しにくいため、研究を行いやすく、また産業利用しやすい特徴があります。そのため、この微生物からゲノムDNAを調製しました。この菌には2つのキシラナーゼ遺伝子が含まれており、それらをクローニングし、大腸菌発現系を構築し、目的の酵素を用意しました。2つのキシラナーゼ遺伝子情報は日本DNAデータバンク(DDBJ)に登録されています(StXyl10: LC603131StXyl11: LC603130)。

      • 酵素の特徴

        調製した酵素の性質を調べました。どちらの酵素も至適温度は60℃以上であり、至適pHは5.0-9.0の幅広い範囲で安定でした。長時間各温度に置いた時の熱安定性はStXyl10では50℃で安定、StXyl11は60℃保温下での活性の低下が緩やかでした。


        図2.2つの酵素の基本的特性


        • ダルスキシランからオリゴ糖の調製

          キシランの分解条件として、酵素量と反応時間について検討しました。一定時間反応したものを薄層クロマトグラフィーに供し、検出されたスポットの濃度からどのサイズのオリゴ糖ができているかを確認しました。そして、単糖の生成量を少なくしてオリゴ糖を多く作る条件を決定しました。

          図3.2つの酵素が単独でダルスキシランに作用し、 条件の違いによるキシロースおよびキシラン量の推移

          • キシロオリゴ糖の組成分析

            上記の方法で生成物を調べていった結果、最終的に2つの酵素を組合わせることでキシロースの生成量が少なく、オリゴ糖を多く作ることができました。その生成物をゲルろ過クロマトグラフィーに供することで鎖長の長い糖質の確認、高速液体クロマトグラフィーで鎖長の短いオリゴ糖の分析を行いました。下の図はそれらをまとめた結果です。ダルスに特徴的なβ-(1→3)-グリコシド結合を持つオリゴ糖(DXOS)を赤色で表し、β-(1→4)-グリコシド結合のみからなるものをβ-(1→4)-XOSとして青色のX2-X4で表しました。このようにダルスに特徴的なDXOSを多く含むオリゴ糖を調製することができました。この時のキシロース量は1%以下となっており、オリゴ糖を効率的に調製できております。
            注:DXまたはXの後に続くのはキシロースの数を示します。例えば、X2だと2糖になります。


            図4.今回決定した条件でダルスキシランを加水分解した際の生成物の組成

            • 今後の展開

              ・異なる構造を持つダルス由来キシロオリゴ糖の調製方法の開発

              ・善玉菌への機能性評価