植物プランクトンによるイソプレン生成に関する研究
主題大綱
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海洋生物資源科学部門・海洋環境学分野・大木研究室の紹介です
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イソプレン()は、二重結合を二つもつ炭化水素で化学式はC5H8です。
植物は、イソプレン単位( )を骨格にして、カロテンなどの有機物を合成します。イソプレンは揮発性が高いため、光合成時に植物体外へ放出されることが明らかになっています。大気中の植物由来のイソプレンは有機ガス成分として大きな割合を占めています。海洋植物からのイソプレン放出もあり、海洋大気の酸化能力を変えることが考えられています。光合成ができない暗所では、植物はカロテンを分解してエネルギーを得ます。このときにも、イソプレンが放出されると思われます。本研究では、海洋の植物プランクトン群集によるイソプレン生産速度を調べるとともに、暗所生成についても調べています。
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北海道の噴火湾は、太平洋に面しています。湾には、年2回外洋水が流入して、水が入れ替わります。夏場と冬場のある時期は、噴火湾内に水が滞留します。噴火湾は、同一水塊内で水質変化を時系列で追跡できるモデル海域といえるのです。
練習船うしお丸は、主に北海道沿岸域の調査に使われています。本調査では、水温や塩分など基本項目のほかに、イソプレンを含む有機ガス成分、栄養塩や全炭酸も測定しています。
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クロロフィル濃度(右図)2月から3月にかけて、全層で急激に増えています。珪藻の大増殖(ブルーム)が発生したためです。光が届かない深度でもクロロフィル濃度が高いのは、表層で増殖した珪藻の群体が沈降してきたためです。
イソプレン濃度(左図)2から3月にかけて、混合層内で増えています。光合成生産にともなうイソプレン放出によるものです。光が全く届かないところでも、イソプレンが増えていました。初めて、暗所でのイソプレン生産を観測から捉えられました。
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イソプレンは、海水中で植物プランクトンが生産すると同時に、バクテリアにより分解されています。バクテリア分解の効果を調べる必要があります。
植物の光合成により、酸素とイソプレンが生産されます。酸素とイソプレンの正味の生産量から、ある期間の海洋基礎生産量を見積もることが期待されます。
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