海洋応用生命科学部門・生物資源化学分野・藤田研究室の紹介です
これまで微生物は有用物質の生産や発酵食品の製造など人の暮らしに様々な恩恵を与えています。しかし、環境中の微生物の99%以上は未だ分離培養できていないと考えられています。すなわち、未培養微生物は膨大な未利用遺伝資源と考えられます。我々は微生物を培養する事無く直接DNAを取得するメタゲノム法でその探索を行っています。遺伝資源は一度失われると二度ともとには戻りません。生物多様性を維持し未利用遺伝資源の探索を行っています。 このような研究を通して、SDGs(海を豊かに)に貢献したいと思います。
国連では2021年からの10年間を、「海洋科学の10年」に定めて、SDGsに貢献することを目指しています。国連が定める海洋科学には、水産漁業の分野も含まれます。
【コラム】
多くの細菌がなぜ人工環境で分離培養できないのでしょうか?
必須な栄養素の生産を他の細菌に依存しているからという例も知られていますが、多くの場合はその理由はわかっていません。
一つの化合物を作るのには多くの場合複数の遺伝子が必要です。
ただ、細菌では必要な遺伝子が連続してまとまったセットになっていることが多いです(遺伝子クラスターという)。
そのため、全ての必要な遺伝子をまとめて一つのクローンに組み込むことが可能です。
抗菌物質の生合成遺伝子クラスターの場合は自己耐性遺伝子も含まれています。
方法①のメリットとデメリット
メリット
これまでに全く知られていない(既知の配列情報が無い)遺伝子を取得できる。
DNA配列決定のコストがいらない。
デメリット
メタゲノム遺伝子が大腸菌で機能するとは限らない。
複数の遺伝子が必要な場合は難しい(不可能ではない)。
時間と手間がかかる。
方法②のメリットとデメリット
検索するだけなので手間がかからず、膨大な遺伝子情報を短時間で処理できる。
大腸菌で機能しない遺伝子も探す事ができる。
既に知られている遺伝子に似ているものしかヒットしない(全く新しいものは見つからない)。
データしかないので、遺伝子を人工合成する必要がある。