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    • 海洋応用生命科学部門・生物資源化学分野・藤田研究室の紹介です

    • 14  SDGs top

       これまで微生物は有用物質の生産や発酵食品の製造など人の暮らしに様々な恩恵を与えています。しかし、環境中の微生物の99%以上は未だ分離培養できていないと考えられています。すなわち、未培養微生物は膨大な未利用遺伝資源と考えられます。我々は微生物を培養する事無く直接DNAを取得するメタゲノム法でその探索を行っています。遺伝資源は一度失われると二度ともとには戻りません。生物多様性を維持し未利用遺伝資源の探索を行っています。 このような研究を通して、SDGs(海を豊かに)に貢献したいと思います。

       国連では2021年からの10年間を、「海洋科学の10年」に定めて、SDGsに貢献することを目指しています。国連が定める海洋科学には、水産漁業の分野も含まれます。


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    • 海洋生物からはこれまでに30000を超える化合物が見つかっており、その中には医薬品としての有用性を持つものも少なくない。

      その多くは細菌などの微生物が生産していると考えられているが、微生物の99%以上は未だ人口環境では培養できない。

      そこで、培養に依存せず、微生物のゲノムを取得するメタゲノム法で、未利用遺伝資源を探索する研究を行っている。

    • 微生物は医薬品開発、食品加工、産業素材開発など多くの面で活用されています。しかし、これまでに培養できた微生物は全体の1%以下と考えられており、膨大な未利用遺伝資源が残されていると期待されます。未培養菌の遺伝資源を取得する方法として、培養に依存せず環境サンプルから直接DNAを抽出するメタゲノム法が開発されています。


      様々な海洋環境試料および海洋生物資源にメタゲノム法を適用し、高品質なメタゲノムDNAを抽出する方法、有用物質を生産するための生合成遺伝子を探索する方法、そして取得した生合成遺伝子を使って化合物を生産する方法を開発しています。


      本資料では、メタゲノム法による遺伝資源の探索方法の紹介と結果の一部をご紹介します。


    • 【コラム】

      多くの細菌がなぜ人工環境で分離培養できないのでしょうか?

      必須な栄養素の生産を他の細菌に依存しているからという例も知られていますが、多くの場合はその理由はわかっていません。


    • 環境試料(海底堆積物や海水)や大型宿主生物(海綿やホヤなどの底生無脊椎動物)から微生物を集めてきて、細胞を破砕しゲノムDNAを得ます。
      その後の目的を考えるとなるべく長いDNA断片かつ不純物の少ない高品質DNAが望ましい。

      しかし、試料の性状が様々であり、画一的な方法では難しいです。



    • 取得したメタゲノムDNAから有用遺伝子を探す方法は大きく二つあります。

      一つはランダムに培養容易な細菌(大腸菌など)に組み込み、その中で機能を発揮するものを探す方法(①ランダムクローニング)、もう一つは全てのDNA断片の配列を決定して、その情報の中から機能性遺伝子を探すものです(② 全配列決定)。


    •  取得したメタゲノムDNAの断片をランダムに大腸菌などの培養容易な宿主に組み込みます。左写真の一つ一つのコロニーにはそれぞれ異なるメタゲノムDNAが組み込まれています。

      一つ一つのコロニーをメタゲノムクローンといい、その集合体(この例ではプレート全体)をメタゲノムライブラリといいます。

      メタゲノムに何かの物質(色素など)を生産するのに必要な遺伝子が含まれていた場合、クローンはその物質を生産します(色素の場合はコロニーに色がつく)。


    • 【コラム】

      一つの化合物を作るのには多くの場合複数の遺伝子が必要です。

      ただ、細菌では必要な遺伝子が連続してまとまったセットになっていることが多いです(遺伝子クラスターという)。

      そのため、全ての必要な遺伝子をまとめて一つのクローンに組み込むことが可能です。

      抗菌物質の生合成遺伝子クラスターの場合は自己耐性遺伝子も含まれています。


    • 方法①のメリットとデメリット


      メリット

      これまでに全く知られていない(既知の配列情報が無い)遺伝子を取得できる。

      DNA配列決定のコストがいらない。


      デメリット

      メタゲノム遺伝子が大腸菌で機能するとは限らない。

      複数の遺伝子が必要な場合は難しい(不可能ではない)。

      時間と手間がかかる。


    • 配列決定したメタゲノム情報をデータベース検索にかけます。
      自分が目的とする機能を有する遺伝子と配列が似ていれば似たような機能が期待されます。
      また、相同性検索をすることで、メタゲノムDNAがどのような生物由来だったのか、どのような化合物を生産できるのかなど、目的機能以外の様々な情報を取得できます。


       

    • 方法メリットとデメリット


      メリット

      検索するだけなので手間がかからず、膨大な遺伝子情報を短時間で処理できる。

      大腸菌で機能しない遺伝子も探す事ができる。


      デメリット

      既に知られている遺伝子に似ているものしかヒットしない(全く新しいものは見つからない)。

      データしかないので、遺伝子を人工合成する必要がある。


    • 海洋メタゲノムから生産されたシデロフォア類の例とその由来および生合成遺伝子クラスターの構成。
      様々な海洋環境試料や生物からメタゲノムDNAを取得し、実際に遺伝子をクローニングして物質生産を実現しています。
      中には新しいタイプの遺伝子や海洋からは初めての物質もあります。

  •  資源機能化学科 SDGS14