CTD採水システム
Diagrama de temas
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北海道大学水産学部おしょろ丸海洋調査部 今井圭理、小熊健治、澤田光希
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このシステムは、CTDセンサと採水装置を組み合わせた水中局、船上局(水中局から送られてくるデータを受信するデッキユニット、デッキユニットが受信したデータを収録・表示するデータ収録PC)、およびそれらを接続するケーブルとで構成されます(図2,3,4,5)。水中局はクレーンを用いて海面上に吊り上げられた後、ウインチに巻かれたアーマードケーブル(同軸ケーブルを鋼線で被覆したもの)と呼ばれる特殊ケーブルを繰り出して海中に降下させます。水中局が計測した値は、アーマードケーブルを介して直ちにデッキユニットに伝送されます。デッキユニットが受信した計測データは、データ収録PCに保存されると同時に、専用のソフトウェアを使って監視されます。また、船上局から採水信号を発することでニスキン採水器の蓋を閉め、任意層の海水試料を採取することができます。
図2 CTD採水システム 構成図
図3 CTD船上局の構成
船上局はデッキユニット、データ収録PC、モニタなど入出力機器で構成されます。写真は練習船おしょろ丸(北海道大学)のCTDオペレーションルームの様子を写したもので、デッキユニットとデータ収録PCが2台ずつラックに納められており、そのすぐ隣にモニタやキーボードが設置されています。
図4 CTD水中局の構成
図5 多筒採水装置
a) 採水装置の上部には採水トリガーとなる掛け金が放射状に並べられていて、その周りを取り囲むように採水器が配置されます。掛け金に採水器の蓋についたテグスをひっかけて採水器の蓋を開けた状態に保持します。 b)採水装置が採水信号を受けると掛け金がはずれ、採水器の蓋が閉じます。
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CTD採水システムによる観測は①オペレータ②現場作業者③ウインチマン④船橋当直者が連携して作業にあたります(図6)。
図6 CTD観測の作業分担
①オペレータ
船内のオペレーションルームで船上局やデータ収録PC上でのソフトウェアの操作を行います(図7)。観測中はデータが正常に取得されていることをモニタで確認しながら、必要なタイミングでウインチマンへ停止・巻き上げ・繰り出しの指示を出します。また、野帳と呼ばれる記録用紙に観測日時や船位(緯度・経度)、天候などの事項を記録します。予め決めておいた採水深度で水中局を止め、船上局から採水信号を送って採水器の蓋を閉めるのもオペレータの役割です。リアルタイムにデータを監視し、各作業分担者に指示、あるいは情報収集をしなければならないのでこの観測の司令塔となります。
図7 CTDオペレーションの様子
②現場作業者
観測甲板上で水中局の取り回しを行います。水中局の投入前に、採水器の蓋を開けて採水装置の海中投入前準備をします。投入作業と揚収作業の際には、船の動揺によって水中局が振れ回らないよう、ロープなどで振れ止めをとります。水中局を揚収したら、採水器から海水試料を取り分ける作業(配水作業)を行います(図8)。
図8 配水作業の様子
③ウインチマン
ウインチコントロールルームでウインチやクレーンの操作を行います。観測中はオペレータからの指示に応じてウインチの停止・巻き上げ・繰り出し操作を行います。
④船橋当直者
観測中、オペレータ・現場作業者・ウインチマンからの指示に従い、潮流や風、波浪の状況を考慮しながら船舶の観測体制を維持するように操船します。操船には舵角や翼角、スラスタと呼ばれる姿勢制御用プロペラの調整を行います。特に水中局の投入・揚収作業時には船の横揺れが極力小さくなるよう熟練が必要です。
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CTD採水システムによる観測は停船した状態で行います。観測地点に到着して船が観測体制に入ったら、図9に示す順番で作業を進めます。CTD観測ではワイヤを繰り出して水中局を海中に降下させることを「ダウンキャスト(Down Cast)」、その反対にワイヤを巻き上げて水中局を海中で上昇させることを「アップキャスト(Up Cast)」と言います。
図9 CTD観測作業の流れ
①採水器のセッティング
水中局の投入前に採水器の上下の蓋を開けて採水装置の投入前準備をします。また、採水器の取水口と空気孔が閉まっていることを確認します(図10)。
図10 採水器の投入前準備
a)上蓋に接続されたテグスの先端を採水装置のトリガーにひっかけて上蓋を開けた状態に固定します。 b)上蓋のテグスから分岐させて下方に伸ばしたテグス下端のスナップフックに、下蓋のリング状テグスをかけて下蓋を開けた状態に固定します。 c)エアベント(空気孔)とペットコック(採水口)が閉まっていることを確認します。エアベントは時計回りに回してねじ込むと閉まります。ペットコックは手前に引き出すと閉まります。
②水中への投入作業
水中局をクレーンで海面上に吊り上げてからケーブルを繰り出して水中に投入します。この際、船体動揺によって水中局が振れ回らないよう、ロープなどで振れ止めをとりながら作業します。水中局が振れ回ると、舷側と衝突してセンサや採水器を破損したり、作業者を負傷させたりする恐れがあります。
③ダウンキャスト
海中に投入した後、オペレータが船上局を操作してデータの取得を開始します。目的の深度まではケーブルを繰り出して、連続的に鉛直分布を計測します。オペレータはCTDの圧力センサの出力値をもとに、目的の深度でケーブルの繰り出しを停止させます。
④アップキャスト
ケーブルを巻き上げて水中局を船上に回収するまでの間に、任意の水深で採水します。オペレータはCTDセンサの値を監視しながら、予め決めておいた採水深度でワイヤの巻き上げを停止させた後、船上局から水中局へ採水信号を送って採水器の蓋を閉めます。
⑤船上への揚収作業
採水を終えたら、水中局を船上に揚収します。
⑥配水作業
水中局を船上に揚収したら、採水器からサンプル瓶に海水試料を取り分ける作業(配水作業)を行います。
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図11はCTD観測中の水中局の動きと、それと連動してソフトウェア上で描画される水温・塩分の鉛直プロファイルを模式的に表したものです。グラフの縦軸は深さを表し、グラフの下方ほど深くなります。また、第一横軸(赤色)に水温、第二横軸(青色)に塩分がとられていて、右側ほど高い値であることを示します。また、採水を実行すると、その深度の箇所にマークラインが引かれます。
図11 CTD観測イメージと観測画面