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    • コンブにはヌメリ成分(ネバネバ)が多く含まれています。下の写真は、ネバネバ昆布で有名な、函館特産のガゴメコンブです。コンブの切断面から、ネバネバが流れでる様子です。


      (写真:PIXTAより購入)

      乾燥コンブ(100 g)に含まれるアルギン酸の量は20 g(重量比で20%)もあるのです。写真のように、液状のアルギン酸は水を多く含むので、生きた状態のコンブ体内では、かなりの部分をアルギン酸(+水)が占めるのです。


      コンブのネバネバ(アルギン酸)実験の説明はこちら

      子供向けの科学実験で定番の、「人工イクラ実験」です。人工イクラ実験、実は、その準備と、後始末をするところが科学的に面白い。私(大学教員)と学生(大学生)も、楽しめます。奥が深い。


    • コンブのネバネバの正体はアルギン酸です。「酸」と言っても、塩酸や硫酸のような酸ではありません。炭水化物の一つです。炭水化物とは、炭素、水素、酸素で構成される有機物の総称です。アルギン酸は、マンヌロン酸やグルロン酸が沢山連なった高分子有機物です。下に、マンヌロン酸の化学式や構造を示しました。アルギン酸やマンヌロン酸には、-COOH基がついていて、このHが液中のナトリウムイオンと交換すると、水中に水素イオン(H+)が放たれます。すると、酸性を呈するので、アルギン酸とか、マンヌロン酸と呼ぶのです。コンブ体内では、既にイオン交換したアルギン酸ナトリウムなどとして存在するので、私たちが想像する、すっぱい「酸」の性質は示しません。

       アルギン酸は化学的には「多糖類」に分類されます。糖類と言っても、多くの生き物は、アルギン酸を消化してエネルギー源に利用することができません。そのため、栄養的には、アルギン酸を「食物繊維」といいます。


    • 世の中には、ウロン酸と呼ばれる糖類のグループがあります。ウロン酸には、グルロン酸やマンヌロン酸など、計5種類あり、その化学式や基本的な構造は上の図と同じです。それぞれ、立体構造が違うだけです。海の大型藻類のうち、コンブやワカメ、ヒジキなどの褐藻類だけが、マンヌロン酸とグルロン酸が高分子化したアルギン酸を生産します。そのイメージを下の図に示しました。アルギン酸の化学構造にある-COOH基の水素(H)は、液中のナトリウムイオン(Na+)とイオン交換します。そのようにできるアルギン酸ナトリウムは、水によくなじむ性質になり、粘性のある水溶液になります。これが、コンブのネバネバの正体です。(乾燥コンブにはナトリウムより、カリウムの方が豊富に含まれるので、コンブ体内では、おそらくアルギン酸カリウムの粘性液体として存在すると思われます)


    • アルギン酸ナトリウムは、水に馴染んで、粘性のある水溶液になります。この水溶液に二価陽イオンのカルシウムイオン(Ca2+)を加えてやると、アルギン酸ナトリウムのNaとCa2+がイオン交換します。カルシウムイオンは二価なので、アルギン酸にある二か所の COO基と結合します。すると、アルギン酸カルシウムは水と馴染まず、固体になります。カルシウムが、二つのアルギン酸分子を橋渡しする役割を果たすので、その効果を化学用語で「架橋」といいます。アルギン酸カルシウム粒子の隙間には、多くの水分が含まれ、固体の形状も不定形なので、これを「ゲル状の粒子:ゲル粒子」ともいいます。


    • このようなアルギン酸の性質を利用して、「コンブのネバネバーアルギン酸実験」では、カルシウム溶液(乳酸カルシウム溶液)に、色を付けたアルギン酸ナトリウム(Na)溶液を落として、(人工イクラみたいな)プヨプヨ球体を作りました。下の絵のように、アルギン酸ナトリウム(Na)の球体の表面は、水中のカルシウムとイオン交換して、アルギン酸カルシウムの粒子になります。球体内部には、カルシウムは入ってこれないので、球体内部はアルギン酸ナトリウム溶液のままです。そのため、球体の外側が柔らかい殻で覆われて、プヨプヨ球体になるのです。




       上の絵のようなプヨプヨ球体を作った後、アルギン酸ナトリウムの溶液を、全て、カルシウム溶液(実験では、乳酸カルシウム溶液を使用)に入れたでしょうか。全部入れると、大きなプヨプヨができたと思います。それを手でこねると、プヨプヨ(アルギン酸ナトリウム)の全てが、液中のカルシウムと反応して、硬い塊のアルギン酸カルシウムになります。
    • ここまで、アルギン酸について説明してきました。海洋環境に対して、アルギン酸がどのような役割を持つのだろうか? 褐藻類(コンブなど)のブルーカーボン研究について紹介します。

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