Garis besar topik

  •  海の水の流れについては、LASBOS海洋の化学にて、水の流れの章、海洋の塩分コースから順に学べるようにしています。本ページでは、これらをかいつまんで説明します。(かいつまんだ、といっても、結構長いです。頑張って、ついてきてください)

     頑張れない人は、最後の「これだけは覚えて」へジャンプ!

    • 海洋では、熱帯や亜熱帯で蒸発が活発、亜寒帯では降水による淡水供給が卓越します。


      そのため、海洋の表層水は、高塩分の亜熱帯海域、低塩分の亜寒帯海域に大別されます。

      しかし、大西洋は高塩分化が進み、太平洋では低塩分化が進みます。それは、亜熱帯で発生した水蒸気豊富な空気は貿易風で東から西へ流されるのですが、大西洋の風下、中米には高い山が無いので、湿った空気が太平洋に流れるからです。


      そのため、太平洋に比べて、大西洋の方が、塩分が0.2%(=2パーミル)ほど高くなっています。

      太平洋と大西洋の亜熱帯同士、太平洋と大西洋の亜寒帯同士で比べて、ともに2‰(パーミル)高いのです。

      この塩分差が、海洋大循環を駆動しています。

      大西洋の亜熱帯の高塩分の水が、メキシコ湾流によって、大西洋の北極に近い所まで北上させられます。北極に近いので、冬場は相当冷やされます。高塩分の海水が急速に冷やされて、高密度化した水が、深層3000 mまで沈み込むのです。


      毎年冬、表層から水が沈降してくるので、深層水は押し流されます。押し流される方向は南です。

      赤道を超えて、南極海まで到達します。これを、北大西洋深層水といいます。



      海の中では、水温や塩分は変化しません。北大西洋深層水は、北極近くの海で沈みこんだ時の、低水温と塩分を保っているのです。

    • 南極海に到達した北太平洋深層水は、南極大陸の周囲を巡る、南極深層還流と合流します。(南極深層還流の元々の水は、北太平洋深層水です)

      南極の海も、冬場は相当冷やされますし、海氷が形成されるので、海氷から吐き出された高塩分の水(ブライン水)が排出されます。その低温・高塩分の水は、南極深層還流の水を巻き込みながら、海底まで沈みます。これが、世界で一番重たい、南極底層水です。南極底層水は、世界中の海の底を這って北上します。


      南極底層水は、北太平洋にまでやってきます。北太平洋の北の縁までやってきたら、北太平洋深層水となり、ジワジワと浮上して中層水に混じると考えられています。

      このように、世界中の海を水が巡っており、以下のような、絵で表されています。


      (気象庁HPより)

      これを見ると、深層水の起源である北大西洋から、南極海を巡って、一番長い旅を続けてきたのが北太平洋の深層水であることがわかります。世界で一番古い水が、私たち(日本)の近くの海にあるのです。

    •  北太平洋を南北方向に切った、水温(上)と塩分(下)の鉛直断面図を示します。

       まず、下の塩分図を見てください。深層には、北大西洋由来の高塩分(34.6以上)の水が横たわっています。太平洋の亜寒帯の表層は、塩分が33.8未満と低いです。太平洋の亜寒帯(北海道より北の海)も、冬場は相当冷やされます。しかし、太平洋亜寒帯では、低塩分の水がいくら冷やされても、北大西洋由来の深層水よりは重たくなりません。そのため、冬場に冷やされた水は、深層水の上、中層に広がります。塩分分布の図(下)を見ると、低塩分の中層水が亜熱帯に広がっている様子がわかります。



      太平洋のマップに、亜寒帯域、亜熱帯域、その中間(混合域)で観測した場所を、青丸、赤丸、緑丸で示しました。



      これらの場所で、海洋観測を行い、水温、塩分、圧力(水深)を計測した結果を、T-Sダイアグラムにして示します。


      左上方向が、高水温・低塩分なので、低密度の水がある海洋表層です。右下方向が、高塩分・低水温の海洋深層方向です。亜寒帯(青)、亜熱帯(赤)、混合域(緑)で観測した、塩分・水温のプロットは、深層方向で1か所に収束しているように見えます。なぜでしょうか? 北太平洋深層には、北大西洋と南極海を経てやってきた、北太平洋深層水がドーンと横たわっているからです。各海域のプロットの上端は、各海域の表層水の水温・塩分を表しています。亜寒帯は塩分33くらい、亜熱帯は塩分34.5くらいです。密度26.8σの等密度線付近にある、混合水域(緑)と亜熱帯域(赤)のラインを見てください。ちょうど、その密度のところで、塩分が極小を示しています。これが、北太平洋中層水です。

      このように、海の水は、ある場所(太平洋・大西洋、・表層・中層・深層)、ある時期(冬や夏)で水温と塩分に特徴が現れるのです。そのため、海洋観測をしたら、まずは水温と塩分のプロットをしてみるのが、データ解析の定石なのです。



    • みなさんは、まずは、北太平洋(北海道と東北沖のA-Line)のデータを解析するので、

      これだけは覚えておいてください。


      北太平洋

      亜熱帯域の表層の塩分:34以上

      亜寒帯域の表層の塩分:34未満

      表層の水温は、季節により大きく変わる。

      深層水の塩分は34.7くらい、水温は2℃くらい。

      中層の水は、表層と深層の間くらい。


      (海洋学では、北太平洋中層水として固有な水があるとして、それは、水温・塩分の幅を狭く定義しています)