海洋では、熱帯や亜熱帯で蒸発が活発、亜寒帯では降水による淡水供給が卓越します。
そのため、海洋の表層水は、高塩分の亜熱帯海域、低塩分の亜寒帯海域に大別されます。
しかし、大西洋は高塩分化が進み、太平洋では低塩分化が進みます。それは、亜熱帯で発生した水蒸気豊富な空気は貿易風で東から西へ流されるのですが、大西洋の風下、中米には高い山が無いので、湿った空気が太平洋に流れるからです。
そのため、太平洋に比べて、大西洋の方が、塩分が0.2%(=2パーミル)ほど高くなっています。
太平洋と大西洋の亜熱帯同士、太平洋と大西洋の亜寒帯同士で比べて、ともに2‰(パーミル)高いのです。
この塩分差が、海洋大循環を駆動しています。
大西洋の亜熱帯の高塩分の水が、メキシコ湾流によって、大西洋の北極に近い所まで北上させられます。北極に近いので、冬場は相当冷やされます。高塩分の海水が急速に冷やされて、高密度化した水が、深層3000 mまで沈み込むのです。
毎年冬、表層から水が沈降してくるので、深層水は押し流されます。押し流される方向は南です。
赤道を超えて、南極海まで到達します。これを、北大西洋深層水といいます。
海の中では、水温や塩分は変化しません。北大西洋深層水は、北極近くの海で沈みこんだ時の、低水温と塩分を保っているのです。