Topic outline
課題:海洋の粒子沈降を計算して考察
ストークス沈降の計算式をエクセルシートにしました。海水と粒子の密度、温度(粘性係数は温度に依存します)を入力すると、各粒子サイズの沈降速度が計算できます。両対数グラフでも出力できます。エクセルに数値を入力する場所を黄色のセル、出力する場所をオレンジ色のセルで表しています。
各自、植物プランクトンのサイズ、植物プランクトン群体のサイズ、付着した鉱物粒子の個数、密度を与えて、その粒子がどれくらいの速度で沈降するのか計算してみましょう。ちなみに、大気から海洋に沈着する鉱物粒子のサイズは、おおむね半径1~5 μmの範囲に入ります(一番多いのは、2μmくらい)。
粒子の沈降速度を計算するには、海洋の密度データを与える必要があります。実際の密度データを使いたい人は、ここからダウンロードしてください。おしょろ丸洋上実習(2016年)で北西大洋の東経155度ラインで観測した結果です。
クロロフィル濃度もあります。実際に、どの水深に、どれくらい植物プランクトンが分布していたのか、推測することができます。クロロフィル濃度が0.05 μg/L を下回っていれば、ほぼゼロとみなしてください。(クロロフィル分析の定量下限以下になります)
観測した場所は、いずれも水深5000mくらいあるところです。1000mや3000mまでしかCTD観測をしなかったステーションもあります。
テーマ:海洋を沈降する粒子(植物プランクトンや動物プランクトン、動物プランクトンの糞粒子、空から沈着した鉱物粒子)や浮遊する粒子(TEPなど)について、何かテーマを定めてストークス沈降の式を使って計算し、考察してください。
テーマの例:海洋表層を漂う植物プランクトン(1個体で浮遊するケース、群体として浮遊するケース)に、空から降ってくる鉱物粒子(北太平洋では黄砂粒子)が付着して、植物プランクトン粒子の沈降を促進させる”バラスト効果”があります。ストークス沈降の計算式を使って定量的に説明します。海水の密度、植物プランクトンや鉱物粒子のサイズ、密度、は各自で設定してください。(サイズや密度でとりうる範囲を指定するとよいでしょう) 黄砂粒子の平均的なサイズは、半径2μm くらいです。黄砂粒子の年間沈着量、黄砂イベントの回数は、気象庁などのHPから情報を得て、ある量を仮定するとよいでしょう。
※ 黄砂粒子による”バラスト効果”、それによる有機物の下方への輸送は研究レベルでもナゾが多いです。一つの正解があるわけではありません。
テーマの例:表層で植物プランクトンにより産生されたTEPは、海水密度と同じとして表層で浮いていると仮定します。それに、植物プランクトン粒子が付着すると、表層混合層を抜けて、直下の亜表層に漂うことができるのでしょうか。その条件を探します。そうすれば、亜表層を回遊するウナギの餌になります。
テーマの例:海洋深層への炭素輸送では、動物プランクトンが植物プランクを捕食して、糞粒子として沈降輸送する効果が注目されています。どのような種類の植物プランクトンが、どのような動物プランクトンに捕食されることにより、どのよう糞粒子が深層へ輸送されるのか。ストークス沈降の式を使って見積もり、考察する。
いずれのテーマも、真面目に取り組もうとすると、研究レベルに難しいです。各自、限られた時間内で、できるところまでまとめてください。
日本エアロゾル学会より、エアロゾルペディアの情報発信があります。西日本での年間黄砂沈着量が10 g m-2 とあります。とあります。これは、中国大陸に近いので、かなり多い量だと思います。太平洋の外洋域では、その10分の1くらいの量かもしれません。また、年間の沈着量であることにも注意してください。
海洋深層に設置したセジメントトラップで集まった有機物粒子の形状、組成を調べ、それが大型動物プランクトンのサルパの糞であるとしています。糞粒子の指標物質として、炭化水素組成を探索しました。スカトロジーの論文です。
海洋学会の岡田賞記念論文です。記念論文なので、あれこれ書かれています。北西太平洋のSt.KNOT(おしょろ丸洋上実習でも行くところ)に係留しているセジメントトラップの結果も使っています。
レポート課題で何か考察するヒントがあるかもしれません。
またまた小野寺さん(JAMSTEC)の論文です。JAMSTECでは、北西太平洋亜寒帯域のステーション K2で係留系観測を続けています。そのデータを解析しています。
北大水産学部OBの谷口先生(現東京農大)の記事です。「沈みたがるプランクトン」という章があります。
日本語文献の探し方 【J-stage】 インターネットで【J-stage】のサイトに入る。
「記事を検索する」の検索窓に、例えば、「プランクトン 沈降」と入力して検索。
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英語論文であれば、短めでインパクトのあるオープンアクセス雑誌の、「Nature communications」や「Scientific Reports」がNature誌から出版されています。NatureのHPの「Search」窓でキーワード検索すると、Nature誌全部の雑誌から検索結果がでてきます。そのうち、「Open」と記されているのが、誰でもダウンロード可能な記事になっています。
時間があるときに、いろいろ検索して、興味を広げましょう。