單元大綱

    • 教育プログラム企画推進室・バランスドオーシャン運用部・安です

    • ※安先生は2023年3月に北海道大学を退職されました。


    • ウナギは「川の魚」と思われがちですが、実は海と川を行き来する回遊魚です。

      ウナギの産卵場は日本から約 2,000 km 離れているグアム島付近です。

      遠い海で産まれたウナギは陸に接岸して成長し、卵を産むために産まれた海に戻る大回遊をします。


    • ウナギは海水と淡水、両方で生きられる魚であり、生育段階により姿を変える面白い生き物です。

      これからウナギの生活史について説明します。

    • 熱帯の海のど真ん中で産まれたウナギの赤ちゃんは、大きさおよそ3 mm。

      体の下に卵黄と油球を抱えています。


      自分で餌を食べるようになるまで、この卵黄と油球がお弁当の役割をします。

    • 卵黄と油球は孵化後約1週間で消費され、その後は外部からの餌を食べるようになります。

      餌を食べる前をプレレプトセファルス (preleptocephalus)、食べてからをレプトセファルス(leptocephalus)といいます。

      プレレプトセファルスとレプトセファルスを合わせて仔魚といいます。

      天然のウナギは約半年間の仔魚期を海で過ごします。


      プレレプトセファルスとレプトセファルスを分ける時期は学者によって違います。

      一般的な仔魚前期と仔魚後期の概念、つまり卵黄と油球の吸収や摂餌開始を基準(孵化後約1週間)にする人がいれば、レプトセファルスの独特な形である柳の葉っぱのようになるまで(孵化後約1か月間)をプレレプトセファルスと呼ぶ人もいます。


      私はややこしいので、あえて分けずに「仔魚」といいます。

    • 不可思議なウナギの生活史の中でも仔魚期は長年謎に包まれていました。

      そもそも仔魚期を海で過ごすので、川で仔魚が見つかることはなく、例え海で採れたとしても誰がそれをウナギだと気づくでしょう。

      ウナギの赤ちゃんなのに、ウナギとは全然違う形をしていますもんね。


      どうしてもウナギの赤ちゃんを見つけることができなかった古代ギリシャの学者アリストテレスは「ウナギは泥の中から産まれる」と言ったそうです。

      分子生物学技術の発展により、遺伝子を用いた種査定を行うことで、この面白い形の生き物がウナギの仔魚であることが分かりました。

    • 遊泳能力がほとんどない仔魚は約半年間、海流にのって日本や韓国、台湾、中国の沿岸にながれてきます。

      体長が最大に達した仔魚は、私たちが知っているウナギの形である細長い円筒形になります(シラスウナギ)。

      これを「変態 (metamorphosis)」といいますが、ウナギは変態の間は餌を食べません。

      変態が終わったウナギの稚魚は河口域に接岸し、餌を食べ始めると体に色素がつきます(クロコ)。


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    • クロコはどんどん大きくなり、馴染みのある「ウナギ」になります。

      背は緑っぽいブロンズのような色で、腹は白ですが若干黄色です。

      命名した人は背と腹の間に帯のように見える黄色が印象的だったのか、この時期を「黄ウナギ (Yellow eel)」といいます。

      (ただ、この時期は色のバリエーションが大きいです。)

      蒲焼など食用で消費されるのは黄ウナギの時期です。

    • 5~10年間、黄ウナギとして成長したウナギは性成熟すると、もう一度変態します。

      とは言え、レプトセファルスがシラスウナギになるような劇的な変化ではありませんが。。。

      自分が産まれたところ、産卵場に向かって 2,000 kmを泳ぎ続けるために目やヒレが大きくなり、体色も変わります。

      この時にウナギの皮膚が金属のような色に変わるため「銀ウナギ (Silver eel)」と呼ばれ、この変態を「銀化 (Silvering)」といいます。


      黄ウナギの銀ウナギのステージは、体の特徴によりさらに細かく分けられ、Yellow eel stage 1 (Y1)、Yellow eel stage 2 (Y2)、Silver eel stage 1 (S1)、Siver eel stage 2 (S2)に分類されます。

    • 性成熟が始まりS1に変態したウナギは産卵場に向かって泳ぎながらS2に変わります。

      寝ずに食べずに泳いて産卵場にたどり着いたウナギは繁殖を終えた後に、自分が産まれた場所で生を終えます。

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