厚岸沖赤潮発生海域でのクロロフィルaと栄養塩の分布(2021年10月)
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2021年10月7日~8日に北海道大学水産学部付属練習船「うしお丸」に乗船し,厚岸湾沖合の赤潮が発生している海域を調査しました。クロロフィルaと栄養塩の分析結果を紹介します。
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2021年9月13日に北海道大学厚岸臨海実験所の伊佐田智規准教授が厚岸湾で赤潮が発生していることを発見して以降,赤潮の実態が徐々に明らかとなり,北海道東部太平洋岸一帯で赤潮が発生する事態となりました。
赤潮発生海域ではウニ・サケをはじめとする甚大な漁業被害が発生し,北海道の発表による2022年1月14日現在の被害額は81億9千万円と見積もられています。
この赤潮の優占種は渦鞭毛藻類に属する植物プランクトンKarenia selliformis(カレニア・セリフォルミス)です(Iwataki et al. 2021)。
海表面の情報が得られる人工衛星データからは,道東の沿岸から沖合まで広範囲に赤潮が発生していることが想定されましたが,実態の把握には船舶を用いた現地調査が必要であり,我々は厚岸湾沖合およそ20 kmまでの範囲で,海面から海底付近までの深さ方向の水質を調査しました。
観測装置を海面直下に沈めると,真っ白いフレームが着色して見え,水中に植物プランクトンが多量に存在することがわかります。
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2021年10月7日~8日に厚岸湾の沖合の「×」の地点で調査しました
北海道大学水産学部練習船「うしお丸」に乗船して実施しました
CTDセンサーによる水温・塩分の観測と,ニスキン採水器による採水観測を海表面から海底付近まで鉛直的に行いました
採水試料を用いて,以下の項目を化学的に分析しました
植物プランクトン量の指標となるクロロフィルa濃度
植物プランクトンの栄養分となる海水中に溶けている窒素(硝酸塩,亜硝酸塩,アンモニウム塩),リン(リン酸塩),ケイ素(ケイ酸)
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上の図は陸地側(左側)から沖合側(右側)にかけての海表面(上)から海底(下)までの断面図です。
上の地図でマルで示したL45観測ラインの断面図です。
左は植物プランクトン量の指標となるクロロフィルa濃度,右は植物プランクトンの窒素態栄養分である硝酸塩濃度です。
以下のようなことが読み取れます。海表面で植物プランクトン量が多く(赤潮),水平的に不均一に分布していました
陸地側よりも沖合側で非常に高濃度でした
赤潮は水深10 mより浅い水深に限られました
クロロフィルa濃度の最大値はL45-09地点の水深0 mで73 µg/Lでした
植物プランクトンの増殖に必須な窒素分である硝酸塩濃度は表面付近で非常に低い状態でした
赤潮が増殖したことで使いつくされていました
窒素分が補給されない限り,赤潮はこれ以上には発達できなかったことを意味します
窒素以外の栄養分であるリンとケイ素は残存しており,窒素の不足が赤潮のさらなる増殖を妨げていました
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これらの調査結果を踏まえ,以下の課題を検討していく必要があります。
これだけの多量の植物プランクトンの増殖を支える栄養分がどこから供給されたのか?
リンとケイ素が残存しているものの,珪藻類植物プランクトンが増殖せずに,なぜ有害植物プランクトンが増殖したか?