行動と概日リズム(サーカディアンリズム)
セクションアウトライン
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生物の生理状態はおよそ24時間の周期を持つことが多く,例えば,哺乳類の体温などもそうであり,温度の変化の周期は一定していてその周期は24時間となります。しかし,その動物を温度を一定にした明暗サイクルのない状況,例えば,恒常的に暗い,恒常的に明るい,といった環境におくと体温変化の位相は遅れだしたり,進みだしたりします。ただし,周期的な体温変化は維持されます。このように,外部環境によらずに,約24時間(人間の場合,25時間に近い)の周期性の生物時計によって生じる内因性のリズムを概日リズム(サーカディアンリズム)と呼びます。
多くの海洋生物の行動も同様であり,1日の行動の多寡には周期性があります。また,その周期性は概日リズムによる場合が多く,生活環境に光が存在する場合,多くの動物と同様に明暗サイクルが同調因子となっています。なお,恒常的な環境(恒常暗や恒常明)で消失してしまう生物リズムは内因性ではないため,概日リズム(circadian rhythm)ではなく,昼夜リズム(diurnal rhythm)として区別されます。
漁業では,こうした生物の日周的な行動にともなう水平的な移動や鉛直的な移動を経験的に利用してきました。例えば,トロール網の曳網水深や刺網,延縄,かごなどを設置する場所や水深の決定に対象生物のこうした行動の性質は大きく関わっています。また,摂餌行動の周期もこうした基本的な行動の周期性と連動しており,釣り漁業ではそうした時間帯の見極めが重要となります。