全プランクトンバイオマスに占める各分類群の割合が、大きく亜寒帯域と亜熱帯域で異なったのは、構成生物の違いの反映です。亜寒帯域では春の植物プランクトン大増殖による生物生産を表層で食べて、それ以降の季節を深海で過ごす、大型の多細胞動物プランクトン(休眠期を持つカイアシ類)が多く、調査を行った夏季には、それらが特に中層(200-1000 m)で優占します。休眠期を持つカイアシ類の潜る水深はせいぜい2000 mぐらいまでで、それより深い層ではその占有率は急激に減少します。また、同じ亜寒帯域でも、休眠期を持つカイアシ類の占有率は、より亜熱帯域寄りの海域(39N, C)で少ないことが分かります。

一方、亜熱帯域では深海で休眠期を持つカイアシ類はほとんど分布しません。これは、生物生産に季節性が乏しいことの反映と考えられています。亜熱帯域での生物生産は、上層より落ちてきた沈降粒子が溶存体の有機物になり、それを栄養とする従属栄養性細菌が増え、さらにその従属栄養性細菌を餌とする単細胞動物がそれに次ぐバイオマスを持ちます。単細胞動物は多細胞動物プランクトンの餌になりますが、食う-食われるの関係があると量は減るので、多細胞動物の割合は、極めて少なくなります。


Last modified: Sunday, 26 April 2020, 11:02 PM