私は水産流通や漁業に興味を持っており、大学では水産サークル「レディ魚ー」の活動を通じて、札幌や函館の市場の見学や、漁業者の方々からのお話、産地市場を訪問してきました。様々な水産の現場を知り、少しずつ水産を学ぶ中で、様々な疑問が浮かんでいました。その中でも詳細な水産物流通の仕組みは大変興味があり、本やインターネットにて情報を集めていました。

そうした中で今回の研修を知り、「豊洲市場を実際に見てみたい」という強い思いが湧き上がり、参加を決意いたしました。

 

豊洲市場研修では築地魚市場株式会社さんを始めとする東市グループの皆様に三日間、豊洲市場について教えていただきました。
本文ではツアーでの学びを中心にツアー中に感じたことを記させていただきます。

 

・水産物ってどう流通するの!?市場の役割、機能について

↑築地魚市場株式会社さんのオフィスのロビー

 豊洲市場研修初日、座学からのスタートです。築地魚市場さんのオフィス内(豊洲市場セリ場5階卸売業者さんが集まるフロアは圧巻でした…)で、「水産流通の仕組み」や「そもそも市場とは何なのか」など、市場に関する様々なことを教えていただきました。皆さんは、普段食べている魚がどのように流通して食卓に並んでいるかご存じでしょうか?水産流通の概要を、築地魚市場さんに教えていただいたことを元に少しだけまとめさせていただきます。

現在水産物は様々な流通形態をとりますが、一般的な流通経路は漁師(生産者)が魚をとり、港の水揚げ場所(産地市場)に持って行きます。そこで産地の仲買人が魚を買い消費地の卸売業者(大卸)に送ります。卸売業者は全国各地から水産物を集め、規格をそろえて小分けし、消費地の市場でセリや入札、相対などの取引を行い仲買人売買参加者に販売します。そして小売業者仲買人売買参加者から販売され、スーパーや魚屋に水産物が並びます。

この流通の中において、築地魚市場株式会社さんは卸売業者(大卸)に属します。

 少しややこしいですよね…なぜ流通形態がこんなにも複雑化しているのか。その答えを続いてお話していただいた「市場の機能と役割」から垣間見えることが出来ました。

卸売市場には、消費者・生産者・買い手のための役割が合わせて3つあり、この役割を果たすために、大きく分けて6つの機能があります。(上部図参考)
その中で水産物流通において特に重要になるのが

①    集荷、分荷機能  価格形成機能  決済機能

です。
3つの役割の必要性の中に水産物の特徴が隠されています。

・多種多様な種類が存在し、大きさによっても加工方法が異なる水産物。

市場では全国各地から水産物を集め、種類やサイズごとなど、買い手(スーパーや飲食店など)が使いやすいように分けられます。(集荷、分荷機能)

・獲れる量が日々変わり、需要と供給のバランスが変動する水産物。

市場という情報が公開される場所でセリや相対などの取引が行われ、公的に水産物の価格が決定し、生産者に迅速に料金が支払われます。(価格形成機能・決済機能)

・鮮度が命、流通に時間をかけられない水産物。

水分量が多く、適切な温度で素早く流通させなければ鮮度が悪くなるため、集荷、分荷、価格形成を素早く行うことが市場の役割です。

このような水産物の特徴を突破するために水産流通は複雑になっていったのではないでしょうか。

 

次の項目では水産流通を支える市場の内部を見学した様子をお伝えします!
大量の水産物が目まぐるしく動く様子はまさに圧巻でした。

 

これぞ豊洲!豊洲市場セリ場見学!!

 研修2日目、AM4:00 豊洲市場 

いよいよ、豊洲が一番活気に満ちる早朝セリ場の見学です。
市場では、ウニや活物、マグロなどの大物で部門が分かれており、その部門ごとに取引の形態、時間、場所が異なります。

 

魚の脂や汚れを上階にあげないように長靴乾燥専用の部屋がありました。

 

 私たちがセリ場に入りまず目にしたのは、大量に並べられたウニ。
その数、なんと約7000(折ウニ)!これでも少ないほうだと言います。
仲買人さんがウニを入札やセリで買う前に、品を一つ一つ確認するため毎日並べるとのことです。

その美しさに脱帽しつつ、次のセリ場へ向かいました。

 

 2階から1階へ階段を下り到着した先には、数多くの生け簀!活魚の受け渡しや取引のスペースでした。
活魚の生け簀には全国各地の多種多様な魚がかごの中で泳いでおり、かごごとに番号、匹数、重量が記されていました。(買い手が魚の情報を確認できるようにするため)
活魚は、その供給の安定性から天然と養殖により取引方法が異なり、天然魚はセリで、養殖魚は買い手と売り手が直接やり取りする相対での取引となります。

また、販売相手によって受け渡す状態や魚を〆る時間が異なり、買い手の要望に沿って一日何百、何千という魚を締めて受け渡すそうです。
活魚の量と、神経締めの技の速さに驚きながら、隣のセリ場へ移動しました。

 

せわしなく動くターレー、サッカーコート何面分かもあろうかという広さも狭く感じるほど積み上げられた段ボールや発泡スチロール。
ここは鮮魚や、加工品などを扱う相対スペースです。
卸売業者それぞれに割り当てられたスペースに毎朝大量の魚を並べて、買い手の方と取引を行います。
鮮魚は、イワシ・サバ部門やカレイ・タラ部門、高級魚部門など、さまざまな部門に分かれており、それぞれの部門で取引が行われていました。部門担当者のその魚に対する知識、想いはものすごく、圧倒されるばかりでした。
(この場所は魚好きの私にとって興奮が抑えられず、水族館を回る小学生のようになっていました…)

 

 セリ場最後の見学は530分から始まるマグロのセリでした。場内に冷蔵、冷凍のマグロがざっと並べられ、5時半を過ぎた頃「カランカランカラン」と金ベルが鳴り始めます。セリ開始の合図です。金ベルと共に方々でマグロを見ていた仲買人さんが集まり、卸売の方がマグロにつけられた番号を叫びます。番号を何度も言い続け、その間に買い手がハンドサインで値段を出し合い、高値を付けた買い手が卸売の方に名前を言われ、選ばれます。記帳を行っている間に次のマグロに移ります。この間わずか15秒ほど…一瞬の間に次々値段が決まってきます。

 全くついていくことができず、ただ圧倒されていました。

 

 

北大水産学部の先輩との交流

朝食を社員食堂(卸売業者さんが共同で利用する食堂)でいただいた後、築地魚市場株式会社さんで働かれている北海道大学水産学部卒業の先輩からお話を伺いました。大学のサークルや授業の話から、北海道の魚の流通形態についてなど様々な話で盛り上がりました。「何が今獲れていてどんなニーズがあるのか、来てくれた人に伝えられるように卸売業者は魚に対して常にアンテナを張っていなければならない仕事」。その言葉に仕事に対する思いが強くこもっていました。

 

歴史ある築地場外市場

午後、私たちが向かったのは豊洲市場の前身である築地市場の場外市場。築地場外市場横の波除神社という神社をご存じだろうか。毎年獅子頭のお祭りが有名ですが、ここに築地市場の時代から現在まで続くユニークな供養塚があります。寿司や卵、鮟鱇など、市場の仲買人さんたちが協力して扱う食材を供養しています。

↓昆布塚

 場外市場は観光客であふれ賑わい、観光客向けの飲食店や露店も数多く並んでいました。しかし一歩裏路地に入ると昔ながらの昆布屋や刃物屋、乾物屋などが立ち並んでおり、築地市場の趣を感じさせられました。

↑築地場外市場の裏路地

↑全国から集められた珍しい煮干し

 

市場内で加工まで!?豊洲市場を支える冷蔵庫棟・加工パッケージ棟

 研修3日目 

豊洲市場場内にある巨大な建物、加工パッケージ棟と冷蔵・冷凍庫棟

ゆりかもめの「市場前」駅から飲食店などが並ぶ仲卸棟に向かう間に、加工パッケージ棟の入り口がひっそりと姿を表します。
加工パッケージ棟3階にある共同水産さんの加工場を少し覗かせていただきました!

↑仲卸棟隣、加工パッケージ棟

共同水産さんは、ホテルやスーパーなどに向けた業務用の魚の加工を行っています。この日ちょうど結婚式場用の魚の切り身の加工を行っていました。丸の魚から三枚におろし切り身にするのは手作業で行われており、お盆や年末年始などの忙しい時期は、6人でヒラメを1200枚卸すこともあるという、その早業に驚きました。

その後、仲卸棟を挟んだ反対側にある冷蔵・冷凍庫棟の建物の加工場を見学させていただきました。

↑仲卸棟3階、奥まで続く長い道は運搬用通路になっています

冷凍・冷蔵庫棟の共同水産さんの加工場では、大型スーパー用にサーモンの加工が行われていました。衛生上この中に入ることは難しく、中に取り付けられたカメラから加工場を見学しました。
ベルトコンベア上を流れるサーモン、気づけばラウンド(内臓だけ取り除かれた状態)からフィレになり、真空パックに梱包されていました。骨抜きや真空パックなどの作業は機械が行いますが、その機械の速度に合わせて調整する人の滑らかさが一連の流れに繋がっており、その美しさに感動しました。

 

↑東市グループの共同水産さんと東市ロジスティックスさんが管理する冷蔵・冷凍庫棟。

 

 加工場の見学後、東市ロジスティクスさんに案内していただき冷蔵・冷凍庫を見学しました!冷蔵・冷凍庫業務はお客さんから冷凍・冷蔵品を預かる、管理業務を行っています。冷蔵庫、冷凍庫、超低温冷凍庫があり、それぞれ、預かり荷物用と場所貸し出し用でスペースが分かれています。

扉をくぐると極寒!預かり荷物用の冷凍室はサッカーコートはあろうかという広さで、書庫のようなラックにびっしりと番号が付けられた荷物が詰められていました。冷蔵庫の中ではフォークリフトで荷物の移動を行っており、この場所では異なるメーカーの重機2台が使われています。なぜメーカーが異なるのかというと、故障やリコールのリスクを下げ、一日たりとも止まらないようにするためだと言います。

流通を止めないという強い思いが一つ一つの配慮に表れており、強く私の中で刺さりました。

 

 今回、豊洲市場研修を経て、水産流通の要である卸売業や冷蔵管理、一次加工業などの仕組みや業務内容といった水産業の大きな学びにもなりましたが、さまざまな方の仕事への向き合い方や、熱い想いを知ることが出来て、社会勉強としての側面も大きく学べたと思います。他の卸売市場とはまた規模感が異なり、膨大な量の魚を一日で動かす設備や、人、その想いに圧倒されていましたが、改めて水産は鮮度落ちが早く、管理が難しい水産物を扱うからこそ流通させるために様々な工夫や、仕事が必要になる業種であり、そこが非常に興味深く、学びがいのある産業だと強く感じました。これからも多種多様な視点から水産を見つめていきたいと思います。


Sửa lần cuối: Thứ Sáu, 24 tháng 10 2025, 2:44 PM