豊洲市場見学研修プログラム事後レポート
北海道大学水産学部海洋生物科学科2年 中拂ふみ


1. はじめに

私はサークル活動などを通して、道内の養殖場を訪問したり漁業関係者からお話を伺ったりする中で水産物の流通に興味を持つようになりました。また、授業を通して、海洋資源の管理や保護についても興味を抱き、流通や商売といった側面からも水産業を捉える視点を得たいと思っておりました。今回のプログラムには実際の現場の雰囲気を肌で感じるとともに、水産業界をよりマクロな視点で見ることができるようになりたいとの思いから参加しました。 


2.実施した内容について   
                           
【1日目】                                          
東京に到着してすぐに豊洲市場に向かいました。2018年に開場したばかりとあって建物はとても新しくきれいで、オフィスのあるフロアに上がる際には非常に緊張しました。豊洲市場は東京ドーム約8.8個分という広さを誇り、年間の水産物の取扱量は日本全体の約4分の1にあたる31万トンと世界有数の規模を持ちます。築地魚市場株式会社(東市)様のオフィスを訪問し、豊洲市場における流通の仕組みや市場の機能・役割についてお話を伺いました。お話から、市場が水産流通の生産者から消費者までの大きな流れの中で、非常に重要な役割を果たしていることを実感しました。


    

【2日目】
実際の市場の様子や、ウニ・ハモ・マグロの競りを見学させていただきました。特にマグロの競りは印象的で、マグロが一面に並べられた広場には鐘の音や競り人の力強い声が響き渡り緊張感にあふれていました。また、市場の見学では商品となる水産物を間近に見ることができて、とても楽しかったです。特に印象に残ったのは活魚ボックスです。実際に使われている様子を見るのは初めてで、遠方から生きたまま魚を運ぶことの難しさを感じました。職員の方が自身の担当する魚種について、生き生きと語ってくださっている様子が印象的でした。

   
若い方や女性の方も思っていた以上に多く働かれているように見えました


東市で営業担当として働かれている北大水産学部OBの方に、お仕事や学生時代についてお話を聞きました。特に漁獲量や価格の変動が激しい水産物を扱う上で、お客様や荷主様との関係や、情報を素早く正確に伝えることを大切にしているというお話が印象に残りました。OBの方が実際に社会で活躍なさっている姿を見て、今まで想像もしたことがなかった「社会に出て働く」ということに対する具体的なイメージが湧きました。


築地場外市場の様子を見学しました。非常に多くの人でにぎわっており、外国人観光客も多く見受けられました。迷路のような細い道には所狭しと小さな商店が並び、お店の人や商品との距離がとても近く、あたたかい雰囲気があって豊洲市場とはまた違った魅力を感じました。仲卸の市場では全国から様々な水産物が集まっており、北海道の市場では見られないような温暖海域性の魚類を見ることができてとてもワクワクしました。




【3日目】
東市グループの共同水産株式会社様を見学させていただきました。加工場では徹底的な衛生管理の下でサーモンなどの水産物が丁寧に加工されていました。加工やパッケージ作業は機械化が進んでおり単純作業が多いイメージがありましたが、定規を用いて正確に加工するというお話などもあり、匠の技が光る現場であることを実感しました。



今回は冷蔵室、冷凍室、個人貸しの冷凍室、急速冷凍用冷凍室の4種類の倉庫を見学させていただきました。倉庫には用途や目的に応じて異なる温度帯の冷蔵室や冷凍室が使われています。どれも規模が非常に大きく、特に急速冷凍用の超低温冷凍庫は肺が凍るような衝撃的な寒さでした。


3. 学生交流について

普段あまり関わることのない他学科や、他学年の方と関わることができ、大変貴重な機会となりました。自分のやりたいことや好きなことを明確に持ち、自ら積極的に学ぼうとする他の参加者の姿は非常にまぶしく、同世代とは思えないほどでした。彼らの姿に衝撃を受けるとともに、自身の学ぶ姿勢を改めて見つめ直す良い機会となりました。


4. 学びや発見

水産業はさまざまな要素が複雑に絡み合っており、その奥深さは計り知れないように感じました。ただ魚がたくさん取れれば良いというわけではなく、「生産者から消費者までの大きな流れすべての活発さが重要である」という言葉が非常に心に残りました。

実際に現場を見たり、市場で働く人の話を伺ったりすることで、獲れる魚種の変化や漁獲量の変化について肌で感じることができました。特に暖水性魚類の分布域が高緯度側へ拡大していることはお話の中にも何度か出てきており、その現状を実感しました。例えばイセエビなど、ある地域で近年新たに漁獲されるようになった魚種については、その地域の漁獲規制が十分に整備されていなかったり、あっても緩かったりするというお話から、資源管理のために求められることというのは時代や状況の変化に応じて変遷するのだということを感じました。

また、今回の訪問で最も印象に残ったのは、水産物の流通において人と人の関わりが非常に重要視されていたことです。東市の職員の方のお話から、建物が新しくなり新しい技術が導入されるようになった今でも、その根本には人と人のつながりがあるように感じました。豊洲市場という非常に巨大な市場において、物流が人々の関係性の上に成り立っているということに大きな魅力を感じました。


5. これまでの授業や体験と異なる点

水産業界のリアルな「今」を体感することができたことが非常に大きかったです。授業などを通して水産業について幅広い知識を得た気になっていましたが、実際の現場がどのような雰囲気でどのように人々が関わっているのかを、全く知らなかったのだということに気づかされました。特に、データや資料として見るものと、実際に体感するのでは大きく差があります。また、普段は北海道の水産に着目することがどうしても多く「日本全体の水産業」を担っている豊洲市場の方のお話は非常に刺激的でした。

6. 反省と要望

個人的には自身の事前学習の甘さを痛感しました。特に経済的な事柄や市場に関する政策についてはほとんど事前知識がなかったため学習しておけば良かったなと後悔しました。


7. まとめ

志を持って水産学部に入学したものの次第に自分が本当にやりたいことを見失い、漠然とした将来への不安を抱えながら惰性で水産学を学ぶ日々を過ごしていました。しかし今回のプログラムを通して、「やはり水産が好きだ」という自分の思いを再確認できたように思います。水産業では、人の力ではコントロールできない自然と向き合い、海という人知を超えた広大なフィールドから資源を得ます。そこでは自然環境・経済・社会などさまざまな要素が複雑に絡み合っており、その奥深さは計り知れません。専門的な知識に加え、多角的な視点が求められるということを痛感しました。

今回の経験を通じて、水産物の資源管理や調査の分野について、より深く学びたいという気持ちが強まりました。同時に、北大水産学部という学びの機会にあふれた場で自分の興味の範囲に縛られず、様々なことに興味を持って取り組み、学びを得ていこうと思います。将来は何らかの形で日本の水産業界に貢献できる人材になりたいと強く思います。


8. 最後に

この度の研修プログラムに参加させていただき、誠にありがとうございました。 東市の皆様をはじめ、プログラム関係者の皆様には、貴重な学びの機会と温かいご支援を賜り、心より感謝申し上げます。



















Diperbaharui kali terakhir: Jumaat, 24 Oktober 2025, 2:36 PM