長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科 修士2年 山本悠理
実施した内容(実習から学生交流まで)
この度、共創の場×CREENカリキュラムのプログラムの一環としてサーモン養殖場と加工場を訪問しました。私は長崎大学にてブリやシマアジ等の養殖に関する研究を行っていることに加え修士号取得後も養殖に携わりたいと考えており、本プログラムには長崎で馴染みの無いサーモン養殖に関する情報収集や現場体験による経験獲得を目的に参加しました。特に今日の水産業において高いシェアを誇っているサーモンと日本の固有種であるブリを生体的特性や市場価値といった点で比較し、ブリ養殖における新たな課題や改善点の発掘を目標としました。
実習内容
1. 養殖生簀見学(株式会社古清商店)
サーモン養殖場訪問では函館漁港の構内に設置された海面養殖生簀と実際に水揚げを見学しました。見学したサーモンは去年の秋ごろに宮城から淡水トラックで運ばれて函館にやってきた個体で、生簀投与前は1週間の期間、トラック内にて海水馴致を実施します。
生簀はおよそ12(W)×10(L)×3(H)の比較的小規模にて行われており、小ロットで高い付加価値を付与した個体を市場に出荷します。小ロットでの養殖は高い付加価値の付与つまりブランド化に非常に有効であることを感じました。私は小ロットがブランド化に有効である要因としてサーモン管理の集中化だけでなく、小ロットによる減耗数や個体差拡大の軽減の可能性考えています。サーモンは他魚種と比較し増肉係数が低く成長速度が速い魚種であり、仮に高密度でのサーモン養殖を実施する場合摂食量に個体差が生じやすく、もっと言えば体サイズに個体差が生じやすいことが予測されます。このことを踏まえると、サーモン養殖において高品質そして安定したサーモン育成の実現のためには生簀と飼育数のバランスを十分に考慮する必要があると考えます。
2. 加工工場見学(株式会社古清商店)
加工工場見学では水揚げしたサーモンの前処理からセミドレス、フィレ、包装、冷凍、保存までを見学しました。驚いたことに、ほとんどすべての工程が手作業で行われており、歩留まりも約85%とかなり高い可食部保持率でした。また、前処理から保存まで一度も工場を出ないため、異物混入の危険性を限りなく抑えられていました。本見学にて函館サーモンが高品質で認知されている要因を実感しました。
本研修での学び
本研修を通して、個人的に一番印象的だった学びを紹介します。
養殖では体サイズにおいて必ず個体差が生じて価値の差に繋がっていくことは周知の事実で、個体差は上述したような魚を低密度で飼育した際でも生じます。長崎大学で行っているブリやシマアジの養殖でも個体差は顕著に見られ、小さい個体は間引いております。そのことを踏まえ、今までの私の考え、取り組みでは個体差を極力減らす事に注力し、実際に飽食給餌の実施やベストな給餌タイミングの模索を行ってきました。しかし、本研修にて小さな個体にも加工品として高い価値で販売する等、我々のアイデアで別途付加価値を付与することが可能であることを学びました。今後、養殖業が求められるサステナビリティや効率性かつ合理性の実現のために、生産段階でのフードロス削減のアイデアづくりに努めようと思いました。
長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科 修士2年 山本悠理