海洋のアルカリ度と炭酸カルシウム粒子の溶解

 炭酸カルシウム粒子の溶解が進むのは、海水中の炭酸イオン濃度が減ること(pHが下がること)、圧力が増すことが条件になります。下の図は、海洋表層で生産された生物起源の炭酸カルシウム粒子が沈降して、海底に堆積する様子をイメージしています。3つの層に分けて説明します。

炭酸カルシウム過飽和(Ω>1):表面から底層(大西洋)、中深層(太平洋)までの水深帯

 海洋表層付近は、どこでも炭酸カルシウム粒子が溶解することはありません。海水が炭酸カルシウム粒子に対して過飽和な状態(Ω>1)にあるからです。炭酸カルシウム飽和度のことをオメガ(Ω)で表すことが多いです。(過飽和といっても、勝手に析出するほどの過飽和ではありません) 海底の水が過飽和(Ω)であれば、海底には炭酸カルシウム粒子が蓄積するので、実際に白っぽい堆積物層になります。

炭酸カルシウム飽和(Ω=1):大西洋では底層、太平洋では中深層のある深度

 海洋では、深いほど、炭酸カルシウムに対する飽和度が下がってきます。あるところで、炭酸カルシウムに対して飽和(Ω=1)になる深度が現れます。その深度を、炭酸カルシウム飽和深度といいます。

炭酸カルシウム未飽和(Ω<1):大西洋では底層から海底面、太平洋では中深層から海底面

 飽和深度より深いところでは、未飽和(Ω<1)になり、炭酸カルシウム粒子の溶解が進みます。


飽和深度(Ω=1)~CCDの深度帯の海底面

 炭酸カルシウム未飽和(Ω<1)なので、炭酸カルシウム粒子は溶解します。飽和深度に達したとしても、その溶解速度はかなり遅いものです。溶解する速度よりも、表層から降ってくる速度が勝れば、海底面には炭酸カルシウム粒子の蓄積がゆっくりと進みます。


炭酸カルシウム補償深度(Calcium carbonate Compensation Depth: CCD)

 表層から降って堆積する速度と、溶解する速度が釣り合う深度を、炭酸塩補償深度(Calcium carbonate Compensation Depth: CCD)といいます。これより深いところの海底面には、炭酸カルシウム粒子は残りません。






ここで、炭酸カルシウム粒子が海水で溶解する条件式を書き出します。

CaCO3 (s)  Ca2+ + CO32- ;溶解平衡定数Ksp

Ksp = Ca2+】×【CO32-


過飽和な状態は、   Ca2+】×【CO32-/ Ksp  >  1

飽和(平衡)な状態は、Ca2+】×【CO32-/ Ksp  =  1

未飽和な状態は、   Ca2+】×【CO32-/ Ksp  <  1

で、表されます。

 海水中のCa2+イオンは豊富にあるから、【Ca2+】は変化しないとみなせます。したがって、海水中の【CO32-】が小さくなると、炭酸カルシウムに対して未飽和になってCaCO3粒子は溶解します。


海水中の【CO32-】が小さくなる条件 

 では、海水中の【CO32-】が小さくなる条件とは何でしょうか? すでに学んできたように、海水のpHが下がると、炭酸系物質の解離平衡が移動して、DICに対するCO32-の割合が小さくなります。pH8ではCO32-DIC = 9%なのが、pH7になるとCO32-DIC = 1%にも満たなくなります。


Last modified: Friday, 26 June 2020, 8:18 AM