Pokok Topik Kursus
概要
私たちの研究グループは、サケ科魚類の成長がホルモンによってどのように調節されているのかを調べています。成長調節に中心的な役割を果たすのは、成長ホルモン(Growth hormone, GH)−インスリン様成長因子(insulin-like growth factor, IGF)-I系と呼ばれる内分泌系です。その中でもIGF-Iとその活性を調節しているIGF結合蛋白に焦点を当てています。
代謝と成長は密接に関係している
代謝と成長はよく聞く言葉ですが、両者の関係は下の図のようになっています。代謝は、エネルギーを消費して簡単な物質から有機物を合成する過程である同化と、複雑な物質を分解してエネルギーを取り出す異化に分けられます。そして、同化の余剰分が成長として、体を支持する細胞の増殖、分化、肥大などに回されます。しかし、動物が飢餓状態などに陥った時、余剰分を切り崩して異化に回してエネルギーを調達します。このように代謝と成長は連動しています。
成長はホルモンによって調節されている
魚類を含む脊椎動物の成長は、成長ホルモン(GH)とインスリン様成長因子(IGF)-Iによって主に調節されています。脳下垂体から分泌されたGHは直接もしくはIGF-Iを介して間接的に骨や筋肉といった標的器官に作用します。IGF-IはGHの刺激により主に肝臓でされ血中に分泌されます。血中IGF-IはGHの作用を仲介するのに加えて、脳下垂体でのGHの合成・分泌を阻害します。これを負のフィードバックと呼びます。このようにして、GH-IGF-I内分泌系は自律性を保っています。IGF-Iは細胞増殖を促すだけでなく、鰓に作用すると海水適応能の向上を助けます。また、生殖腺の発達にも関与しています。このような多様な作用を持つIGF-Iはなぜ適切なタイミングで適切な器官に作用することができるのでしょうか?それには複数存在するIGF結合蛋白(IGFBP)が重要な役割を果たしていると考えられています。
IGF結合蛋白(IGFBP)はIGF-Iの活性を調節している
IGF-IのほどんとはIGFBPに結合した状態で存在します。IGFBPは、IGF-Iが受容体に結合するのを阻害する機能と、IGF-Iを分解から守りながら標的細胞に運搬して受容体に渡す促進機能に大別されます。IGFBPには1~6のタイプが存在し、それぞれが異なるIGF-I阻害・促進機能を持っているとされます。このように何でも屋のIGF-Iの活性は複数のIGFBPにより厳密に調節されていると考えられ、IGFBPは成長調節メカニズムを理解する上で重要な要素です。
IGF結合蛋白を定量することは有用である
IGF-Iによる成長促進作用を調節するIGFBPですが、サケ科魚類の血中には主に3タイプが存在します。それらは分子量の大きい順からIGFBP-2b、-1aおよび-1bと名付けられています。これらはIGF-Iの活性を調節するという機能の面で重要ですが、成長状態を反映しているという点で、成長指標としても有用であると私たちは考えています。下の図のように、マスノスケ(キングサーモン)の幼魚を摂餌群と絶食群に分けて飼育すると、血中のIGFBPのパターンには違いが見られるようになります。例えばIGFBP-2bは摂餌している群で高く、IGFBP-1bは逆に絶食している群で高くなります。これらをIGF-Iと共に、成長の正と負の指標に用いることにより、サケの成長スピードをより正確に評価できる可能性があります。これにより養殖業やふ化放流事業を効率化できることが期待されます。
参考文献
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