北海道産海藻に含まれる機能成分の解明及び 分析手法の確立
海洋応用生命科学部門・水産資源開発工学分野・栗原研究室の紹介です
海洋応用生命科学部門・水産資源開発工学分野・栗原研究室の紹介です
世界でも有数の産地である北海道沿岸海域に生育する海藻に含まれる成分の化学的研究を行っています。具体的には、ヒトの健康や水産物の安全を期待できる機能性成分を探索して、それらの構造や働きを明らかにしています。加えて、機能成分の量を測定するための分析手法の確立を行い、ヒトや水産業に役立てる研究を行っています。
はじめに 北海道沿岸で採集可能な未利用海藻に含まれる機能性成分として、酵素阻害成分を純粋に取り出して、その構造を機器分析などで決めています。海藻は陸上植物と同様に「自分では動くことのできない生物」ですので、体内で様々な化合物を作り出し、生きていくために活用しています。これらの化合物の中で、ヒトに役立つ化合物、水産業に役立つ化合物を新たに見つけることを目指しています。
研究の目的 対象になる酵素として、食後高血糖に関連するα-グルコシダーゼ、生体異物排泄遅延に関連するβ-グルクロニダーゼ、生体内還元剤生成や核酸構成糖類の生成に関連するグルコシダーゼ6-リン酸デヒドロゲナーゼ、尿酸生成に関連するキサンチンオキシダーゼ、炎症等に関連するリポキシゲナーゼ、ヒトのシミ・ソバカスや、エビやカニの保存中の黒変に関与するチロシナーゼなどを用いています。それらの働きを阻害する物質を探索しています。
研究方法 海藻を北海道各地で自ら採集します。研究室に持ち帰り、有機溶媒で抽出物(エキス)をつくります。抽出物の酵素阻害試験を行い、強い阻害を示すものを選び出します。それをさまざまなクロマトグラフィーの手法を用いて成分を分離していき、それが強い阻害を示すのか確かめながら純粋な物質になるまで分離していきます。分離した物質は様々な機器分析により、どんな構造をしているのかを決めます。
研究結果 その過程で、フジマツモ科紅藻から海藻特有の一連のブロモフェノール類を得ることができました。また、褐藻からは海藻特有のフロロタンニン類の他に、リポキシゲナーゼ阻害成分として褐藻のワタモからアルカポリエン類やクロロフィル関連化合物を得ることができました。
はじめに 海藻のうち、コンブやワカメなどが属する褐藻類には、ねばねばの多糖類としてラミナラン、フコイダンやアルギン酸などが含まれています。これらの多糖類は様々な機能が既に報告されており、ヒトに良い働きをする成分と知られています。しかし、「じゃ、これらの多糖類は海藻の中にどれだけ入っているの?」となりますが、簡単にどれだけ入っているのかをはかる方法がありません。これはフコイダンが複雑な構造をしており、海藻の種類によって化学的に異なるフコイダンが入っているのも一因です。
研究の目的 そこで、海藻からラミナラン、フコイダンやアルギン酸をそれぞれ取り出し、簡単に量を測定する方法を新たに開発しています。この方法は、安価な測定機器を使うことで、どこでも用いることができる測定方法の確立を目指しています。
研究方法 褐藻からラミナラン、フコイダンやアルギン酸を単独で取り出すことは困難なので、海藻から多糖混合物を抽出してから、簡単にそれぞれの多糖類を分別する方法を検討しました。続いてそれぞれ分離した多糖画分中の多糖類の量を簡単に測定する方法の開発をしています。
研究結果 その過程で、イオン交換法で簡単に多糖類を分ける方法を確立しました。現在それぞれ分離した画分中の多糖類を簡単に測定する方法の確立のための研究を行っています。