※関先生は2024年3月に北海道大学を退職されました。
水質汚濁防止法(第3 排水基準)
<一律排水基準>
環境大臣(国)が設定した基準で,平均排水量50m³/日以上の工場や事業場に適用
<上乗せ排水基準>
一律排水基準では水質汚濁防止上十分でないと認められる区域について,都道府県が条例により排水基準を上乗せするもので,対象となる区域の特定事業場は,指定項目について一律排水基準ではなく,上乗せ排水基準が適用される
■水産加工品(冷凍すり身)
<概要>
・2010年の陸上での水産加工品の生産量は182万トン
・練り製品が最多で約30%,原料はすり身
・冷凍すり身は,洗浄した魚肉に冷凍変性を防ぐ糖類を加え,ゲル形成能を保ったまま長期保蔵を可能した素材
<特長>
1)加熱ゲル形成能を長期間(1-2年)保持
2)非可食部を含まないので製造工程での廃棄物が少ない
3)解凍後すぐに使えるので工場の立地選択や計画生産が容易
<欠点>
1)凍結変性の防止に用いる糖類に甘味
2)加熱条件によって褐変(メイラード反応)
3)品質を外見で判断しにくい
■すり身製造における魚肉水晒し液からのタンパク質の回収とその利用
仁木弘ら(雪印乳業株式会社札幌研究所)日本水産学会誌(51, 959-964, 1985)
●すり身製造では,カマボコの「足」の強さと白さを上げるために魚肉を「水晒し」する
●「水晒し」で本来は可食部である水溶性タンパク質が流出
●その流出量は魚肉の全タンパク質の30-45%
●しかも,流出タンパク質は排水処理に大きな負担
●魚肉の水晒し排水のタンパク質の回収の試み
→凝集法(電解,加熱,等電点),加圧浮上法など
■スケトウダラのすり身製造における排水処理
※すべて「一律排水基準」の対象(50 m³/日以上)
■北海道内のすり身加工場の排水処理の例
※一次処理は凝集加圧浮上法,二次処理は活性汚泥法
※一律排水基準:COD <160 mg/L
■凝集加圧浮上法
1)凝集剤を加えて懸濁物の凝集体(フロック)を形成させる
2)加圧水を加えて発生した気泡で凝集体を浮上させる
● 懸濁(浮遊)物質は難沈降性→沈降速度が極端に遅い
1)密度が水に近い
2)サイズが非常に小さい
● 微粒子の沈降速度(Stokes’s Law)
[慣性力]=[重力]-[浮力]-[抵抗力]
● v = Δρg²/18μ
v:粒子の沈降速度,Δρ:粒子と流体の密度差
D:粒子の直径,μ:流体の粘度
■水中のSSの表面電荷
水中のSSの表面電荷
Marshall, Aust. H. Biol. Sci. (1967)
Huang & Lin, Adsorption from aqueous solutions (1981)
■凝集法
水中のSSの表面はマイナスに電荷→ SS間に反発力
個々の粒子が安定に分散
☞CHECK!! 【実験動画】生物分解性凝集剤による凝集処理
☞CHECK!! 【実験動画】アオコの磁性分離
■凝集前のアオコ
■生分解性凝集剤で凝集させたアオコ
■磁性鉄粒子を添加して急速撹拌
■さらに緩慢撹拌
■ネオジム磁石で分離
■浮上分離
浮上分離法:界面活性物質の気泡への吸着を利用した分離法
・洗剤,タンパク質,脂肪酸など
・親水部:OH基やイオン性基
・疎水部:主に炭素と水素
・洗剤の主成分:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS,NaC₁₂H₂₅SO₄)
※SDSはラウリル硫酸ナトリウムともよばれる
なぜ,界面活性物質は気泡に吸着するか
・界面活性物質は疎水部を水から出して水面に並ぶ
・水分子同士の水素結合が強いので,水分子と結合できない
・疎水部は水から押し出される
水中に気泡があると,気泡に吸着して液面まで運ばれる
水中の気泡に吸着して液面まで運ばれる
界面活性剤と結合する物質も一緒に液面に運ばれる
■食品産業廃棄物に関するアンケート
農林水産省フードシステム連携強化・循環資源支援事業:食品産業32業種,562社(水産21社)
■活性汚泥法:微生物を利用した水処理
■魚粉と魚油の製造工程
<フィッシュソリュブル>
魚類の加工の際に生ずる煮汁から油分を除いて濃縮したもので,用途は主に配合飼料の原料
魚粉製造時の煮汁や,缶詰工場の廃棄物である魚の非可食部を蒸煮した煮汁などが主原料
煮汁中のタンパク質を酵素分解し,固形分を除去したものを濃縮して製造
成分組成は,魚種・雌雄・成熟度・季節などによって異なるが,ビタミン類とタンパク質が多く,特にビタミンB群が魚粉より豊富
■2010年の世界の魚粉と魚油製造の物質収支
世界のイワシ・ニシン類の漁獲量は約2000万トン
→ 70%が魚粉になっている・・・
最新水産ハンドブック(第3刷以降) / 島一雄ら編著 : 講談社, 2015, ISBN:9784061537361