魚群シミュレーションを用いた定置網設計
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定置網漁業は、海中に数kmにも及ぶ規模の大型の漁具を設置し、魚群が入網するのを待つ受動的な漁業です。
日本では、漁業種別では、3番目に大きな生産量を占めています。
魚群は、最初垣網に遭遇し、垣網に沿って運動場に入網します。
その後、昇網に沿って箱網へと入網し、漁獲されます。
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定置網は港から比較的近い位置に設置されていることから、魚群を狙って漁獲しに行く漁業(例えば、トロール網や旋網)と比較して、漁船の燃料消費が少ないことが知られています。
また、魚を一網打尽に漁獲しないことから、資源にも優しい漁業といわれています。
一方で、定置網は受動的な漁業であることから、狙った魚を獲ることができません。
最近では、北海道でクロマグロの小型魚の混獲が問題となっていますが、これらを意図的に防ぐことは難しいのが現状です。
こうした問題に対して、私たちの研究グループでは「定置網形状の工夫で漁獲量をコントロールできないか?」と考えました。
ただし、定置網は規模が大きく、実海域で試験することは難しいことから、シミュレーションによるアプローチを試みています。
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シミュレーションでは、魚群行動を再現するために、Boidモデル(Reynolds, 1987)を用いました。
Boidモデルは、鳥の群行動を再現するために開発されたモデルであり、魚の行動にも利用されています。
このモデルを定置網の3Dモデルへと適用することで、魚がどのように漁獲されるか、どのくらいの割合で箱網に入網するか・逃避するか、をPC上で明らかにしました。
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以下は、上記のシミュレーションを500回繰り返した場合の入網率・逃避率を表しています。
ここでは、入口の網角度を60°と90°に設定して、それぞれシミュレーションしました。
その結果、網角度が90°の時の方が運動場に入網する割合は大きくなりますが、逃避する割合も増加しました。
結果として、60°の方が箱網へ入網した魚群量は多くなりました。
今後は、実際の漁獲対象種(サバ、アジ、マグロなど)の行動の違いをモデルで再現することで、選択的に漁獲対象種のみを漁獲できる定置網設計が可能になると考えています。
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Yuki Takahashi, Kazuyoshi KomeyamaFisheries Science 2020年9月