行動生態学とは個体レベルの生態学だと先ほど述べましたが、もう少し詳しく説明しましょう。
行動生態学は、生物個体が環境とどのように関わっているのかを研究します。ここでいう環境には、水の流れや光の強さ、温度、塩分など、物理・化学的な要因以外に、捕食者や餌となる生物、競争相手、配偶相手、親や子のような他の生物も含まれます。そして、相互作用、関わりあいは、双方向的です。例えば、生物が流れの速すぎる場所や捕食者を避けることのように、環境に応じて生物が行動を変えることもありますが、生物がいることによって流れが遅くなったり、捕食者が近くにやってきたりすることもありますね。つまり、生物が環境を変えることもあるわけです。行動生態学は、このような相互作用を研究します。
このように、生物と環境の相互作用を研究するという生態学の本筋は外しませんが、それに加えて、進化を意識した研究が行われる点が、動物行動学の他の分野(動物心理学や神経生理学、行動遺伝学など)とは異なるところです。このことについては、次以降のスライドで少し詳しく説明しましょう。
なお、行動生態学は、その名の通り、生物の行動を研究対象としています。ただし、形(体の大きさ、模様なども含む)や生活史(一生のスケジュールや成長速度など)も、行動と密接に関係しているので、行動生態学では、それらの性質もあわせて研究することが多いです。