なぜ、噴火湾で観測をするのか、説明は、噴火湾の観測 をご覧ください。
何十年も前から、噴火湾観測が行われてきました。海洋化学の研究事例も多いです。
従来研究に対して、何が新しいのか? を見出さなくてはなりません。
そこで、常套手段ですが、高頻度、多種試料(海水、堆積物、河川水、、)、多成分(栄養塩、全炭酸、有機ガス、、、)で勝負します。
力技なアプローチですが、得られたデータを丁寧に整理して、過去の研究と比較すれば、立派な研究になると思います。
高頻度に観測を実施
・噴火湾の中央付近に観測点を設けて、2月、3月初旬、3月中旬、4月、5月、6月、8月、10月、12月に海洋観測を続けています。
・珪藻ブルームが、3月初旬から4月初旬まで起こるので、珪藻ブルームの前、最中、後の様子を捉えることができるのです。
物質移動を知るための多種の試料採取
・噴火湾の中央付近で、0 m、5~85 m の12層、海底直上50 cm, 直上10 cmの水を採取します。
・珪藻ブルーム中にプランクトンネットで鉛直曳きして珪藻を採取します。
・海底に堆積した珪藻由来の有機物粒子も、採取します。
・噴火湾に流入するユーラップ川の河川水も採取します。
・噴火湾の湾口でも海水を採取します。
多成分分析
・栄養塩5成分(亜硝酸、亜硝酸+硝酸、リン酸、アンモニア、珪酸) 化学屋への登竜門です。
・全炭酸、アルカリ度、溶存酸素 野村組に頼みます。溶存酸素は自動分析です。
・有機ガス成分(ハロカーボン類6成分、イソプレン、メタン) メタンは、野村組の新GCで分析。
・元素分析(炭素、窒素) お金を払って、依頼分析しちゃいます。
・蛍光X線分析(ケイ素、リン、アルミニウムなど) 2021年度に装置立ち上げ予定(超便利な装置を東大から貰ったのに、活用してこなかった)
・堆積物の硫化物(酸揮発性硫化物、王水処理硫酸イオン) (M2の伊藤君のように、堆積物に集中する学生がいれば)
・堆積物の酸化還元電位、pH (M2の伊藤君のように、堆積物に集中する学生がいれば)
・無機ヨウ素測定(ボルタンメトリー) 調整が難しすぎて鬼門です。
(過去失敗したトラウマが、、新しいパーツを手に入れたから大丈夫かも。)
これらのデータより、噴火湾での基礎生産に関係する成分の物質循環過程を追うことを目指しています。
過去、噴火湾でここまで測定されただろうか? いや、無いだろう。
(13C法で基礎生産速度を求めるのは未経験ですが、学生からの要望があれば、できるようにします)
研究の問い(テーマ)は、
・どの栄養塩成分が春の珪藻ブルームの制限要因になったのか?
・春から夏にかけての基礎生産を制限する要因は?
・雪解けが早い年は、河川からのケイ素流入が少なく、ケイ素制限になりやすいのか?
・噴火湾の海底には珪藻ブルームで生産された有機物が堆積します。その堆積した有機物が分解、再生した栄養塩が海水に供給されます。
・海水と堆積物間で循環する栄養成分により、春の珪藻ブルームが支えられる分はどれくらい?
・基礎生産に直接関係する、窒素、リン、ケイ素、炭素の動きと、マイナー成分(イソプレンやヨウ素など)との関係も調べる。
などのテーマが想定されます。
観測をしつつデータを整理して、面白そうな特徴を抽出して、より詳しく解析する。というアプローチになると思います。