投下式CTD
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XCTD(eXpendable CTD)はセンサの付いたプローブを船舶から投下して海水中を自由落下しながら水温と塩分の鉛直分布を計測する投下式塩分水温深度計です(図1)。プローブは細い信号伝送ワイヤを介して船上局と繋がっており、船上でリアルタイムに計測値をモニターすることができます(図2)。プローブが観測目的水深まで達したら信号伝送ワイヤは切断され、プローブは回収することなく海中に投棄されてしまうことから「使い捨てCTD」と呼ばれています。海中に落下するプローブと船上側に残るケースの中の両方にワイヤがコイルされており、投下地点を起点に「船の進む方向」と「プローブの落下する方向」の2方向に対してワイヤが繰り出されるので(図3)、非常に細い線であっても観測の途中で切れることなく水深1000-2000mまでの観測が可能になっています。
図1 XCTD観測図
図2 XCTDシステム構成図
図3 信号伝送ワイヤの繰り出し
ケースとプローブにスプール(糸巻)が備わっており、観測中はその両方から信号伝送ワイヤが繰り出されます。信号伝送ワイヤは非常に弱い力でもスムースに引き出されるようスプールに巻きつけてあります。そのため、線が破断するような張力がかかることはなく、プローブの自由落下が妨げられることもありません。
船舶を観測点に停船させるには時間がかかります。その点、XCTDは船を走らせながら観測できるうえ観測時間も短いため、時空間的に高密度の水温・塩分プロファイルを得たい場合や航海中の観測時間を節約したい場合にその使用が選択されます。また、CTD採水システムなど大型の機器を使用できない荒天時でも観測できます。しかしながら、取得データの精度は有線式あるいは自己記録式のCTD測器と比較して低くなります。特に、XCTDには圧力センサが内蔵されておらず、圧力を直接計測することで深度を求めているその他のCTD測器とは深度値の性質が異なります。XCTDの深度(d)はプローブの着水から海中を落下する経過時間(t)から自由落下を想定する経験式(1)を用いて求ます。
d(t) = at + bt2 ・・・・・・・・(1)
経験式(1)のa,bはプローブの種類毎に与えられる定数で、より精度の高いCTD測器との比較観測に基づいて経験的に決められています。これらの係数はプローブ内部のRAMに記録されており、ランチャにプローブを装着することで自動的にデータ収録PCに読み込まれます。
XCTDが水深ごとの温度と塩分を測定できるのに対し、水深ごとの水温のみを測定するXBT(eXpendable Bathy Thermograph)も広く利用されています。製品としての開発順はXBTが先です。
図4 XCTDランチャを構える観測者
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この観測は、船の位置の確認やデータ収録ソフトウェアの操作、野帳への記録を行う「オペレータ」と、船尾などの暴露部から海中にプローブを投下する「現場作業者」の二手に分かれて行います。ここでは、国内で普及しているXCTDシステム(㈱鶴見精機 TS MK-150Nデータコンバータ, LM-3Aハンドランチャ)を使用した観測の手順を示します。
船が観測地点に到着する前に観測準備を行います。オペレータはデータコンバータの電源を入れた後、データ収録PC上で専用のソフトウェアを起動し、ソフトウェアの観測設定を済ませておきます。現場作業者はプローブをもって暴露部の作業場所まで移動し、ハンドランチャとデータコンバータとを通信ケーブルで接続しておきます。
観測点に着くまでは、オペレータは船と観測地点までの距離を監視し、現場作業者はその場で待機します。プローブの種類によって観測中の船速に上限があるので、オペレータはその速度以下に減速するよう船橋に指示します。船速が制限速度を超えているとプローブが観測水深に到達する前にプローブケースのキャニスタに巻いたワイヤが無くなってしまい、結果としてワイヤが切れて観測が強制終了してしまいます(図3)。
観測地点を通過する1~2分前になったら、ランチャにプローブを接続するようオペレータから現場作業者に指示を出します。現場作業者は指示に従ってプローブをセットします(図5)。プローブをセットするとプローブ内部の電池が消費され始めます。あまり早い段階でセットすると、観測の途中で電池切れをおこして計測できなくなる恐れがあります。
図5 ハンドランチャへのプローブのセット
a)ランチャとプローブの各部名称 b)レバーを押し上げた状態のランチャにプローブをはめ込みます。 c)レバーを引き下げてランチャのコンタクトピンとプローブの電極を篏合させます。
オペレータはプローブが接続されたことをソフトウェア上で確認し、観測地点を通過するタイミングを待ちます。観測地点に到着すると同時に、オペレータは現場作業者にプローブを投下するよう指示を出し、現場作業者は直ちにプローブを海面に向けて投下します(図6)。
図6 プローブの投下
a)ケースからキャップを取り外します。 b)リリースピンを引き抜きます。 c)ランチャを下に傾けるとケースからプローブが滑り出てきます。
プローブが着水すると自動的にデータ収録が開始され、プローブの降下にともなってソフトウェア上に水温と電気伝導度の鉛直分布が描画されていきます。現場作業者は信号伝送ワイヤが船体などに触れて破断してしまわないよう、ワイヤの向きに気を付けながらランチャを保持しておきます。オペレータはデータを監視しながら観測終了深度に達するのを待ちます。観測終了深度に到達するかあるいはプローブが海底に着底したら、ワイヤを切って撤収するようオペレータは現場作業者に指示を出します。現場作業者は指示に従ってワイヤを切り、ランチャと通信ケーブルを片付けます。オペレータは観測開始時と終了時の時刻・船位・水深などを野帳へ記録します。
XCTD観測作業の流れをオペレータと現場作業者とに分けて整理すると、図7のようになります。
図7 XCTD観測の流れ