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自己記録式CTD
北海道大学水産学部おしょろ丸海洋調査部 今井圭理、小熊健治、澤田光希
計測値を内部の記録装置に保存するタイプのCTDを「自己記録式CTD」あるいは「メモリ式CTD」と呼んでいます。小型・軽量であり、アーマードケーブルを巻いた特殊なウィンチを必要としないため、CTD採水システムと比較してより簡便で汎用性のある観測機器であると言えます。天候が悪化した場合でも船舶が観測体制を維持できる範囲で観測を続行することができます。ここでは、「おしょろ丸」で使用している自己記録式CTDを例に、観測方法を紹介します。
図1に自己記録式CTDの外観を示します。センサはステンレス製の保護枠に収められており、中心にある筒状の本体部分にバッテリ(乾電池)と記録装置(不揮発性フラッシュメモリ)が備わっています。
図1 自己記録式CTD SBE19plus(Sea-Bird Scientific社)
観測を開始する前に「データ回収・処理」PCと自己記録式CTDを通信ケーブルで繋ぎ、ターミナルソフトを利用して観測を実行するための初期設定とバッテリー容量(残量)の確認を行います(図2)。その後、通信ケーブルを外し、海中に投入できるようコネクタにしっかりとキャップをします。
図2 自己記録式CTD構成図
CTD観測は原則として停船した状態で行います。ウィンチに巻かれたワイヤロープの先端に測器を接続し、ワイヤロープを繰り出すことで目的の観測深度まで降下させます。海中に投入する前に自己記録式CTDの電源を入れ、揚収したら電源を切ります。船上に揚収した後、再び自己記録式CTDとPCを通信ケーブルで接続し、ターミナルソフトを用いて、測器内部に保存された計測データを回収します。
図3 自己記録式CTD 観測図
また、自己記録式CTDを係留系と呼ばれる海底設置型観測システムに組み込むことで、同一地点における水温・塩分の推移を長期間にわたって計測し続けることができます。
図4 係留観測システム イメージ図
【観測上の留意点】
・有線式CTDと異なり、観測中の測器の深度をリアルタイムに知ることができないため、繰り出したワイヤロープの長さ(線長)を頼りに測器のおおよその深度を判断します。測器と船の水平距離が大きくなるほど、線長と測器の深度の差は大きくなるので(線長>測器の深度)、測器の流され方に応じて目的の観測深度よりも多めにワイヤを繰り出す必要があります。但し、海底にぶつけるとセンサが故障しますので、水深を上回るほどワイヤロープを繰り出してはなりません。
・自己記録式CTDは電池を電源として作動します。観測中に電池切れすることのないよう、計測インターバルや電池の残容量、消費電流等を考慮したうえで観測計画を立てなければなりません。また、電池は余裕をもって交換されるべきです。
・この測器には位置情報(GPS信号)を記録する機能がありません。観測者が船位や時刻を正確に記録する必要があります。