溶液反応のベース(溶媒)となる水分子(H2O)は、その一部がH+イオンとOH-イオンに解離します。水の解離平衡の反応式を下に記し、各物質の下に標準生成ギブズエネルギーを記しました。なお、標準生成ギブズエネルギーは、H2O:-237 (kJ/mol)、H+:0 (kJ/mol)、OH-:-157 (kJ/mol)です。
             原形        生成形
水の解離平衡の反応式:   H2O    ⇆   H+  
+  OH-  
     Gf0 (kJ/mol)     -237                               0      
-157
 
 生成形と原形の標準生成ギブズエネルギーの合計差(⊿ΣG 生成形-原形 =ΣG 生成形 - ΣG 原形)は、
 
⊿ΣG 生成形-原形 =(-157 + 0)×1000 - (-237)×1000
               = 80×1000  
(J/mol)・・・①
 
※ ギブズエネルギーの単位からキロ(k)を外したので、1000倍しています
 
水の解離平衡の条件式は、
⊿ΣG 生成形-原形 =-RT・Ln{【H+】【OH-】/【H2O】}・・・②
 
 水溶液の反応を扱うとき、そのベースとなる水分子が反応に関与することがあります。反応に関与する溶質に対して、水の量が十分多く、反応前後で水の量がほとんど変わらなければ、その反応において、“水の濃度は1とします(【H2O】= 1 ) ”。
 (水1kgに含まれる、水分子のモル量を【H2O】とする水の解離平衡定数の表し方もあります。水の濃度を1としたときの定数とは異なるので注意してください)
 
 水の解離が平衡状態に達していれば、平衡定数(Kw※)は、Kw = 【H+】×【OH-】で表される。②式を変形してKwを求めます。ただし、【H2O】= 1、R = 8.3、T = 300 (K)とします。
 
Kw = 【H+】×【OH-】= 
exp (⊿ΣG 生成形-原形 / (-RT) ) 
   = exp( 80×1000/(-8×300 )  =  1.1×10-14  ・・・③
 
   水温25℃ではKw ≒ 10-14  と覚えておけば良いです。
 
水の解離平衡定数Kwを、“水のイオン積”といいます。
 
 多くの化学反応では、H+やOH-が関与して、水素イオン濃度は1~10-16
(mol/L)くらいと幅広いです。その濃度を見やすく表示するため、水素イオン濃度を対数にして、マイナスを付けます。
                            -Log10【H+】= pH
 これを水素イオン指数(pH)とよびます。
 
例えば、水温25℃でKw = 10-14 のとき、
 
【H+】= 5×10-10 (mol/L)→ pH=9.301        → 【OH-】= 2×10-5 (mol/L) 
【H+】= 10-10 (mol/L)         → pH=10      → 【OH-】= 10-4 (mol/L) 
【H+】= 5×10-11 (mol/L)→ pH=10.301      → 【OH-】= 2×10-4 (mol/L) 
【H+】= 10-11 (mol/L)         → pH=11       → 【OH-】= 10-3 (mol/L) 
 
です。
 
式②より、Kwは温度に大きく依存することがわかります。
 
例えば、
5℃(Kw = 0.185×10-14)で、以下のpHのとき【H+】と【OH-】は、
 
pH = 5   → 【H+】= 10-5 (mol/L) 、   【OH-】= 1.85×10-10 (mol/L) 
pH = 6               → 【H+】= 10-6 (mol/L) 、   【OH-】= 1.85×10-9 (mol/L) 
pH = 7               → 【H+】= 10-7 (mol/L) 、   【OH-】= 1.85×10-8 (mol/L) 
pH = 7.37 → 【H+】= 0.43×10-7 (mol/L) 、 【OH-】=  0.43×10-7 (mol/L) 
pH = 8    → 【H+】= 10-8 (mol/L) 、            
【OH-】= 1.85×10-7 (mol/L) 
 
である。
pH7.37で、【
H+】
=【
OH-】となります。