全てが合理的に説明できるわけではありません
スナップショット的な観測(A-Lineモニタリングのように、ある日、ある場所で観測しただけのデータ)で、海水中のクロロフィル濃度と栄養塩濃度の関係を解釈するのは、実は難しいことを知ってください。
基本的には、
・ 栄養塩が豊富にあれば、植物プランクトンが栄養塩を消費しながら大増殖します。
・ 栄養塩が枯渇すれば、植物プランクトンの増殖は制限されます。
例えば、栄養塩濃度がゼロに近いところで(栄養塩が枯渇した状態で)、クロロフィル濃度が高かった場合、どのように解釈できるでしょうか?
解釈A)1週間くらい前まで植物プランクトンが大増殖を続けて栄養塩を消費したため、栄養塩が枯渇してしまった。観測したときは、大増殖した植物プランクトンが(栄養塩に飢えた状態で)表層水中に漂っていた。数日もすれば、大増殖した植物プランクトンは沈降して、表層水から植物プランクトンは無くなってしまうだろう。
解釈B) 2週間くらい前から植物プランクトンが大増殖を続けて栄養塩を消費してきた。栄養塩は枯渇状態になりつつも、亜表層から栄養塩の供給が続いて、大増殖が継続している。(供給された栄養塩は即座に消費されつくされる) 今後1週間は大増殖が続くだろう。
スナップショット的な観測結果からだけでは、解釈AとBを分けることができないと思います。このような事を解釈するため、船上で培養実験を行ったり、鉛直的な水の動きを調べるための乱流観測が行われることもあります。
限られたデータで解析するのが海洋学の常なので、複数の可能性があることを念頭に議論を展開するとよいです。