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    •  近年、北極海では海氷の融解タイミングの早期化や海氷面積の減少など、気候変動に起因すると考えられる、海洋環境の変化が観測されています。海洋環境の変化が海洋生態系に与える影響が懸念されていますが、北極域の海洋生態系を構成する主要生物である動物プランクトンの生活史に関する知見は未だに乏しいのが現状です。この理由として、北極海は冬期間に結氷するため、1年間を通した試料採集が困難なことが挙げられます。これを克服するのが、海氷上に設けられた氷上定点における時系列採集です。氷上定点での時系列プランクトン採集で、史上最も成功したのが米国とカナダによって実施された研究プロジェクト「SHEBA」でした。SHEBAプロジェクトではカナダの砕氷船を観測基地として用い、1997年10月から1998年10月にかけ、西部北極海の氷塊上に係留し、時系列プランクトン採取を行いました。

       SHEBAで採集された動物プランクトン試料を用い、米国ウッズホール海洋研究所の研究者によって、いくつか解析が行われていましたが、深海域に分布する種の生活史については未解明なままでした。