有機炭素フラックス極大の主な原因である、高い規模の植物プランクトンブルームがどのように起こったのかを調べました。衛星観測により捉えられた海洋中規模渦の分布と海面クロロフィル濃度の分布から、12回の有機炭素フラックス極大のうち、合計9回が中規模渦による水平輸送の影響を受けていたことが分かりました(図2、3)。「海洋中規模渦:海の高気圧・低気圧」で紹介されているように、中規模渦が栄養塩や植物プランクトンを水平輸送によって沿岸域から外洋域に輸送することで外洋域の生物生産を高めたと考えられます。そしてその結果として多くの有機炭素が深層に輸送されていたことが示唆されました。以上の結果・考察から、中規模渦はK2における有機炭素フラックス経年変動に大きな影響を及ぼしていたことが分かりました。

図3. 衛星クロロフィル濃度 (カラー、単位: mg m−3) および 絶対海面高度 (黒細線、間隔: 5 cm)。白いエリアは、データのないエリア。黒太線と赤太線はそれぞれ高気圧性渦と低気圧性渦の範囲を示す。白矢印はK2周辺のクロロフィル濃度に影響を与えていたと考えられる渦を指し示す。★はK2の位置。各図の右下の数字は、図2の有機炭素フラックス極大と対応。