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    • 観測された渦の内部は、溶存鉄濃度が低く、生物生産への影響は小さかったことが分かりました。これは、亜寒帯東部の観測結果とは異なります。そこで、今回観測された渦による水平・鉛直方向の鉄輸送を調べました。衛星データを解析すると、渦Aは亜寒帯東部にあるアラスカ半島の南部で形成し、沿岸に沿って伝播した後、沿岸を離れてから2年かけて観測域まで外洋域を伝播してきていたことが分かりました。そのため、沿岸域を離れてからの2年の間に渦内部の鉄が消費されたと考えられました。渦Bは、観測時期の前年の冬季に外洋域で形成していたことが分かりました。そのため、沿岸域からの鉄の輸送が無かったと考えられました。

      次に、観測された海洋中規模渦内の鉛直輸送について、乱流観測の結果を解析しました。渦内外で拡散による鉄の鉛直輸送は弱く(4)、中層に分布していた高濃度の鉄(3)を拡散によって表層へ輸送していた量は小さかったことが分かりました。


      4. 10m間隔で平均した鉛直拡散係数(カラー)、および現場密度(コンター線、0.2 kg m−3間隔)。 黒い太線は混合層深度*2