海鳥は、海洋生態系の大規模な変化のモニターとして役に立ちます。調査船による海洋調査に比べると、海鳥の調査は安価で容易です。広い範囲をうごきまわる高次捕食者であるため、広域の生態系の総合的で簡便な指標となります。ウトウは北太平洋の中高緯度に繁殖する海鳥で、孤島に巣穴を掘って営巣し、外洋で深さ数十メートルまで潜水して浮魚を捕食し、親は夜間にこれらをくちばしにくわえて帰ってきて雛にあたえます。われわれは北海道の日本海に浮かぶ天売島で、この雛のための餌と雛の成長を30年以上モニタリングしています。その結果、1980年代の寒冷期にはマイワシとイカナゴを、1990年代の温暖期になるとカタクチイワシを食べ、雛の成長が良いことがわかりました。ところが、2014以降はホッケ幼魚をおもにたべ、成長は悪く、ほとんど巣立ちしませんでした。こうした餌の変化は中期気候変化、レジームシフトと関係していることがわかってきました。さらに、2018年以降はふたたびイカナゴを食べるようになりました。寒冷期に戻りつつあるのかもしれません。海鳥は海洋生態系の大きなシフトにたいし前もってシグナルを与えてくれるかもしれません。
